2023.10.26

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PEST分析で予測! 2024年春夏の消費トレンドキーワードとは

PEST分析で予測! 2024年春夏の消費トレンドキーワードとは

新型コロナウイルスが感染症法上の5類に移行してから半年が経ちました。生活者の暮らしは活動的になり経済社会活動は正常に戻りつつあります。今年5月に2023年秋冬のPEST分析をご紹介しましたが、2024年春夏はどのようになるのでしょうか。2024年は景気においては緩やかな回復が見込まれています。一方で物価の上昇は落ち着きつつあるといえますが高止まりの状態です。要因として賃上げによる人件費上昇を背景としたサービス価格の上昇があげられます。
本記事ではPEST分析を用いて予測した2024年春夏の消費トレンドキーワードをご紹介いたします。

2024年春夏PEST分析

P(Politics:政治的要因)新NISA制度開始による投資への関心の高まり

2024年1月から「新NISA」がスタートします。NISAとは、2014年にスタートした少額からの投資をする人のための非課税制度のことです。新しいNISAは、年間投資上限額や非課税限度額の増額、非課税期間が無期限になるなど、より活用しやすい仕組みに変わります。新NISAは家計金融資産の半分以上といわれる現金・預金を投資に向けるという政府の方針を反映した制度といえます。
預貯金だけでは資産維持が難しいといわれるなか、新NISA制度の開始をきっかけに生活者の投資への関心はさらに高まると考えます。貯蓄や消費が投資に回る可能性もあります。また、2022年度から高校での金融教育が始まっており、投資の知識を持つ若い層もこれから増えていくと予測されます。
生活者における投資への関心の高まりは、資産の形成だけでなく企業がどのような取り組みをしているのかという関心にもつながっていくでしょう。

E(Economy:経済的要因)消費者物価指数と名目・実質賃金の動向

物価については、消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)は、一時は4%を超えましたが2023年1月をピークに、以降は3%台で推移しています。物価が落ち着き始めた背景にはエネルギー価格の低下が影響しているといえます。また食料(生鮮食品を除く)価格の上昇も一服しつつあります。一方でサービス価格は上昇傾向にあります。サービス価格の上昇は、2023年の春闘賃上げ率が高水準となったことや最低賃金の引き上げなどが人件費に反映されていることが影響しているといえます。今後はサービス価格の動向が注目ポイントになりそうです。また企業においては、サービス価格の上昇の対応策として安さだけではない付加価値づくりへの取り組みを重視していくことが考えられます。
賃金については、実質賃金(物価変動の影響を除いて算出)が上昇し、名目賃金(実際に受け取る給与)との開き幅の縮小の兆しがみえ始めています。先行きの不透明さによって投資や貯蓄などの消費が抑制される懸念もありますが、総合的な物価の落ち着き、実質賃金の上昇が連動していけば前向きな消費マインドの高まりが期待されます。

S(Society:社会的要因)生活者の買い物の行動や意識の変化

買い物の行動や意識について、現在行なっていること・意識していることを聞いた調査より上位10位をピックアップしました。2023年の結果では「コスパの良い商品を選ぶ」が最も多く56.8%。「流行に左右されず長く使えるものを選ぶ」39.9%、「必要最低限のものだけを買う」29.9%が上位になりました。
2022年の結果と比較して特に増加したのは、「コスパの良い商品を選ぶ」(+6.9)、「実物をみてから買うものを選ぶ」(+6.5)、「多少価格が高くても質の良い商品を選ぶ」(+4.7)、「流行に左右されず長く使えるものを選ぶ」(+4.6)でした。減少したのは、「必要最低限のものだけを買う」(-3.2)、「とにかく価格が安い商品を選ぶ」(-0.6)でした。
安さだけではない、価格に見合ったものや多少価格が高くても価値のあるものを選択したいという、価値を重視する志向が高まっているといえます。

T(Technology:技術的要因)AI×One to Oneマーケティングによる売場作り

AI(人口知能)などデジタル技術を取り入れたOne to Oneマーケティングが店頭においても広がっています。店頭にAIを搭載したカメラを設置し、買い物客の行動を追跡する実証実験を開始した百貨店があります。来店客の動線や滞在時間の分析による品揃えや店舗レイアウト改善への活用が目指されています。店長の特性に合わせて店長業務をサポートする人型AIアシスタントを導入するコンビニエンスストアもあり、店舗運営力を高めるマーケティングに取り組んでいます。アバター操作者が特定分野の専門家として店舗内でお客様の相談を受ける環境づくりが整備され、時間やハンディキャップにとらわれない働き方としても注目されています。その他、来店客の購買履歴をAIで分析し、個別にクーポンを配布するシステム開発なども進んでいます。
テクノロジーによって顧客それぞれの行動の把握が可能になることで、個人に合わせたサービスの提供が当たり前となり、生活者の行動に合わせた売場作りが進化していくでしょう。

PEST分析からみる2024年春夏の消費トレンドキーワード

2024年春夏にむけてコロナ禍からの回復による景気の押し上げ効果は一巡しつつありますが、一方で賃上げや物価の落ち着きなど実質賃金が上がる兆しがあります。賃金アップが実感できるようになれば生活者の購買における価格への許容も広がっていくと考えられます。
また、投資意欲の高まりにより企業としての取り組みが評価されたり、顧客それぞれのニーズをとらえるOne to Oneマーケティングにより提供される価値の質も向上していく環境が整っていくことを考えると、安さの追求よりも価格に対して得られる適正な価値を重視する消費がさらに顕在化していくのではないでしょうか。

以上のことから、2024年春夏の消費トレンドキーワードのひとつは以下のようになると考えられます。

終わりに

PEST分析の視点を用いて、2024年春夏シーズンの消費トレンドキーワードを提示いたしました。PEST分析はひとつひとつの事象を俯瞰して見たときに着目できること・注目すべきことは何か?を考え、重点的にとらえるべきポイントの明確化を行うのに有効なフレームワークです。
今回ご紹介した「適正消費」は、価格よりも価値を重視する消費のスタイルを表現しています。
2024年の春夏は新型コロナウィルスによる影響は少なくなり経済社会活動の正常化が進みます。コロナ以前には戻ることのない新しい社会の変化をとらえ、生活者のインサイトをつかむことが重要です。クレオでは、2024年春夏シーズンに注目すべき5つのキーワードを抽出しており、今回はそのなかのひとつをご紹介いたしました。
2024年春夏のマーケティング戦略や販促計画を検討される皆様にとってのヒントとなれば幸いです。

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