2025.05.23
生活者研究
販促・マーケティング
新しい需要を創造する販促計画の考え方

多くのメーカーや小売業の皆様から、「販促計画がマンネリ化してきている」「販促の新しい切り口が見つからない」などの声をよく耳にします。前年の販促内容との差別化を図るために、その年特有の曜日まわりや新しいトレンドを基に、新たな販促の切り口を模索することが多いと思いますが、実はこの他にも新しい販促チャンスを検討するための方法があります。本記事ではその方法を解説していきます。
1、販促計画とは
販促計画とは、企業が自社の商品やサービスをより効果的に市場に届け、生活者に購買を促すために設計する戦略的な計画のことです。年間を通じて訪れる「正月」「バレンタインデー」「母の日」のような、年中行事や季節のイベントに由来する“歳時行動”や、日常生活における特定の行動や習慣を表す「花粉症対策」「衣更え」「熱中症対策」のような“くらし行動”を軸に、販促の切り口を検討していくことが一般的です。
2、販促計画がマンネリ化する要因
“歳時行動”や“くらし行動”をベースに策定する販促計画のテーマは、その月や季節ごとに毎年繰り返される事象を反映したものになるため、新たな販促の切り口を考える場合は、その年特有の曜日まわりやその時々のトレンドを踏まえることになります。しかし、販促計画のテーマに合ったトレンドを見出すことは、決して簡単なことではありません。そのため、新たな販促の切り口を見出すまでに至らず、マンネリ化してしまうことが多いのが現状です。
3、販促計画の新しい切り口を創造する鍵
そこで、販促計画の新しい切り口を導くためには、曜日まわりやその時々のトレンドに加えて、365日の“生活者マインド”に目を向けてみてはいかがでしょうか。
例えば、「疲れた」「ご褒美がほしい」「モチベーションを上げたい」「リフレッシュしたい」といった、365日の月日の流れの中で誰しもが感じるような、消費の原動力となる生活者の気持ちが存在しますが、クレオでは、この行動の源泉となる気持ちを「生活者マインド」と定義しています。この「生活者マインド」の波の起伏や、その起伏の要因を把握できると、年間を通じた生活者のニーズの機微を捉えることに繋がり、新しい切り口を創造することができるのです。
4、新しい販促切り口を考えるための流れ
販促計画の新しい切り口を創造するために、クレオでは以下の3ステップを踏んでいます。
ステップ1:生活者マインドの洗い出し
→自社商品と親和性があり消費行動の起因となり得る生活者マインドに着目
「疲れた」「ご褒美がほしい」「モチベーションを上げたい」「リフレッシュしたい」のような誰しもが感じる可能性があり、消費行動の起因になり得る生活者のマインドのうち、特に自社商品と親和性がありそうなものに着目します。
ステップ2:販促タイミングの洗い出し
→着目した生活者マインドが強まる時期を量的に捉える
次に、着目したマインドが、具体的にどの時期に強まるかを量的に把握します。
そもそも生活者理解の手段として、生活者に対してこちらから質問をする「アスキング」と、生活者に耳を傾ける「リスニング」の2つのアプローチがありますが、現在想定していない新しい需要を発見するという意味では「リスニング」のアプローチが有効です。
「リスニング」の手法のひとつに、SNSの投稿を分析する「ソーシャルリスニング」があります。着目したマインドに関連する投稿が、どのタイミングで増えるのか、そして、そのピークはいつなのかを把握します。そうすることで、生活者がそのマインドを強く感じるタイミングを把握でき、そのマインドと親和性がある商品の新しい「販促機会」を見出すことが可能になります。
ステップ3:新しい販促切り口の種を見つける
→着目した生活者マインドが強まる背景を捉える
着目したマインドがどの時期に強まるかを把握できたら、次はなぜその時期にそのマインドが強まるかの背景の仮説を立てます。実際の生活者の投稿内容に着目し、どのような状況でその気持ちが生まれているのか、何をきっかけにそう感じているのか、生活者の心の声と向き合うことで、生活者の琴線に触れる、新しい視点の販促の切り口を検討することができます。
この3ステップを踏むことで、販促計画の新しい切り口を見つけることが可能になります。
5、事例:「疲れ」マインドの波から新しい販促切り口を考える
では実際に、前述した3ステップを踏まえ、販促計画の新しい切り口を導く事例をご紹介します。
ここでは「疲れ」のマインドに着目してみました(→ステップ1)。
「疲れ」というキーワードを含むSNS投稿量(クレオでは年間平均投稿数を100%として算出・指数化)の月別の推移を見ると、特に3月から5月にかけて「疲れ」に関する投稿数が他の月と比べて多い傾向にあります(→ステップ2)。
次に着目した「疲れ」マインドが生じる背景を探していきます。月ごとの投稿内容の傾向を見ていくと、3月は年度末での引っ越しや仕事の引き継ぎといった多忙さからくる心身の疲れ、4月は新生活が始まり緊張感からくる精神的なストレス、5月にはゴールデンウィーク明けに感じる無気力感や五月病など、その月ならではの「疲れ」の要因が存在していることが確認できました(→ステップ3)。
この3ステップを踏むことで、「疲れ」のマインドが3月~5月に強まることと、その背景には、職場や生活環境の変化、新年度の忙しさ、その反動を受けた五月病によるものと確認され、3月~5月の春の時期においては、特に「疲れ」のマインドの機微に寄り添った販促切り口を検討できるとよさそうだと分かります。
例えば、4月の販促テーマのひとつにゴールデンウィークがありますが、食関連では、ごちそうやバーベキュー、肉料理といった屋内外問わず楽しめるメニュー、衣住関連では、おでかけや旅行準備、子どもとの外遊びといった切り口などが多いと思います。これらは、過ごしやすい気候の中の長期休暇を楽しみたいという生活者ニーズに応えたゴールデンウィークならではの定番の販促切り口です。これに加え、春に強まる「疲れ」の生活者マインドに着目することで、慌ただしい新生活や新年度の反動で蓄積された疲れを癒やせるような、ゴールデンウィークの“新しい”販促切り口を考えることができます。ゴールデンウィークは外に出たり体を動かしたりするイメージが強いですが、ゴールデンウィークにこそしっかり休息を取る提案を盛り込むことで、販促の新しいチャンスを増やすことができるのではないでしょうか。
6、おわりに
クレオでは、生活者行動や行動の起因となる生活者マインドなどの生活者実態、そして、社会行事や潮流といった環境与件の他、業界動向や企業様の方針など、多角的な視点を考慮しながら、新たな販促機会の創出や売上向上に向けた総合的な販促計画支援を行なっています。本記事でご紹介した内容のほか、どのような種類のマインドを扱っているか、詳しくは、以下フォームから無料で資料をダウンロードいただけますので、是非ご覧ください。
また、クレオが発行するマーケティングブック「生活者マインド大全」でも、本記事でご紹介した「マインド指数」を活用し、行動・購買データだけでは読み解けない年間の暮らしの中で生じる数々の生活者のマインドを、オリジナル調査やSNS分析などから導きまとめています。そちらも合わせてぜひご覧ください。