2023.10.13

生活者研究

未来予測

未来の若年単身者が選ぶ住宅を未来予測 ~2030年の暮らしを捉えるVol.2~

未来の若年単身者が選ぶ住宅を未来予測 ~2030年の暮らしを捉えるVol.2~

これからの未来は、人口減少や少子高齢化による社会構造の変化、デジタル技術の加速度的進展、環境問題などの影響から、これまでの歩みの延長線上にはない新たなフェーズとなることが予測されます。そして企業は、そのような変化に柔軟に対応することが求められます。未来の変化への対応には、過去から現在までの事象を踏まえた傾向予測だけでなく、未来に起こりうる与件から逆算した発想も重要です。
そこでクレオでは“2030年の与件”を読み解き、「生活者の暮らしがどのように変わり、そして何が求められるようになるのか」を複数回に分けて考察していきます。第二弾は「未来の若年単身者が選ぶ住まい」についてです。

【1】広がる「生涯シングル前提」の価値観

第一弾のレポートでは、2030年の社会変化から想定される、未来に起こりうるリスクについてご紹介しました。このなかでも特に需要の変化に影響を与えそうなのは、総世帯数に占める単独世帯の構成比の増加です。2030年には単独世帯が占める割合が4割弱まで増加します (詳細はコチラ)。この背景には「生涯未婚率の上昇」「結婚しても子供を産まない選択をする」「高齢化による死別者の増加」などが挙げられるでしょう。

2030年の「生涯未婚率(50歳時点の未婚率)」の将来推計は、30年前の2000年と比べると、男性が28.0%で2.2倍、女性が18.5%で3.2倍の増加見込みになっています (図表①②)。

また「出生動向基本調査」によると、18歳~34歳の未婚者で「一生結婚するつもりはない」と答えた人の割合は男女ともに増加傾向にあり、特に2015年から2021年にかけて、急増しています(図表③④)。「独身生活の利点」において「行動や生き方が自由」と答えた人が最も多く(図表⑤)、悠々自適さを求め、「若いうちからシングル前提」で生きていくことを決心する人が今後も増えることが予測されます。

「若いうちからシングル前提」の価値観が広がると、例えば、住まいについては、賃貸で家賃を払うよりも若いうちから住宅を買った方がよいと判断する人が増えることが推測されます。
2018年の持ち家・借家別の単独世帯数(図表⑥)において、30代・40代の単身者に注目すると、結婚によるライフステージの変化を想定されていることが背景にあるからか、借家の世帯数が持ち家の世帯数よりも多くなっています。一方で、若者を対象にした「持ち家購入に関する意識調査」によると、20代・30代の若者において、持ち家を購入することが将来設計に入っている人は7割弱を占めています(図表⑦)。

今後は若い世代において、シングル前提で生きていく価値観が広がることで、30代・40代単身者の持ち家率が今より増える可能性がありそうです。

【2】未来の若年単身者の住まいを予測

このように、2030年頃の未来においてシングル前提の若年単身者向けの住まいに関するニーズが顕在化してくると考えられますが、彼らはどのような住まい環境で、どのような生活をするようになるでしょうか?未来事象も踏まえ予測しました。

(1)自由な生き方を 一つの家に縛られない暮らし

「全国どこでも誰もが便利で快適に暮らせる社会」。これは政府が掲げている「デジタル田園都市国家構想」にて目指されている近未来の社会像です。デジタルの力で地方を創生し、首都圏一極集中を是正させることが目的にあります。実現のための施策ごとに2023年度から2027年度までの5か年のKPI(重要業績評価指標)が設定されており、例えば、高速通信規格「5G」の人口カバー率を、2023年度末で95%、2030年度末には99%に到達させる目標などがあります。
2030年には「5G」の機能がさらに高度化した「6G」の実用化が期待されています。通信において映像や音声の遅延が大幅に抑えられ、どこに居てもリアルタイムでの映像通信が可能になります。大容量通信が可能になることでVRが容易に実現し、3D映像でスムーズに通信できるようになります。どこに居ても、あたかも通信相手が目の前に存在しているかのようなコミュニケーションがとれるようになるでしょう。

また、コロナ禍を経た新しい若者のライフスタイルとして、住所を持たず住む場所を転々とする「アドレスホッパー」が話題になりました。場所に縛られず自由な暮らしをしたいという若者のニーズと、コロナ禍によって加速したリモートワークという働き方とがマッチしたことの表れの一つでしょう。「行動や生き方が自由であること」が価値観のベースにある未来の若年単身者は、今後の通信技術の発展により何処にいても自由に人と繋がることのできる未来において、平日⇔休日、仕事⇔趣味といったそれぞれのシーンに応じて複数の拠点を行き来する暮らしを実現させていくと思われます。

また、世の中には「3Dプリンターの家」も登場しています。通常の住宅より短時間で施工でき、低コストで家を建てられるのが特徴です。23年夏には水回りや電気を備えた一般住宅としての販売も始まっています。第二、第三の生活拠点として「3Dプリンターの家」のようなリーズナブルな価格の家をいくつか所有する若年層が増える未来も遠くはないかもしれません。

(2)ひとりで暮らすことの不安や不便から解放される住まい

今後「シングル前提」の価値観が広がれば、「独りでも安心安全な暮らしを送りたい」というニーズが増加することも推測されます。特に単身若年層は、単身高齢者向けの在宅時の見守りニーズとは別の、独りで暮らすことへの不安を取り除く住まいが求められるでしょう。例えば、単身若年層は単身高齢者よりも、家を留守にする時間が長くなると思われます。そのため、外出先から施錠忘れを確認できる、施錠を忘れていた場合は施錠できる、家の中の異常を感知する、外出先から来客の確認ができるといった、防犯および家の中の監視機能が求められるのではないでしょうか。
また、「独りでも利便性の高い暮らしを送りたい」というニーズも同様に増加することが予測されます。外出先からエアコンや掃除機を稼働させる、お風呂を沸かすなどといった生活家電や住宅設備を外出先から遠隔操作することで、時間の効率化をはかろうとするのではないでしょうか。

現在、家の中の生活家電や住宅設備がインターネットに繋がり(IoT)、デバイスで一括管理・コントロールできるスマートホームを導入する家庭が増えてきていますが、このようなデジタル技術と融合した住まいが、より身近になると考えられます。

(3)多目的に対応した住まい

未来において、スマートホームの定着や家庭用AIロボットの導入により、家事の煩わしさから解放され、かつ「6G」のような高度な通信技術の発達により家でもリアルで人と相対しているように通信できるようになれば、外出する目的が減り、家の中で多くの事を完結させることが容易になると考えられます。そのため、現在は、独り暮らしの場合、「寝る」「くつろぐ」「食事をする」などの生活するためのスペースが必要最低限確保されていれば、十分であるという人が多いと思いますが、これからは「仕事をする空間」「趣味を存分に楽しむ空間」「趣味に関連するものを飾る、保管する空間」など、目的に応じた空間が複数求められるようになると考えられます。未来においては、単身者向けの家でも、3LDKなど複数の部屋がある家や、目的に応じて間取りを自由に創出できる住まいのニーズが増える可能性があるでしょう。

【3】終わりに

「未来の暮らしを捉える」シリーズ 第二弾の本レポートでは、2030年のマクロ環境データより、若いうちから「生涯シングル前提」で生きていく価値観が広がると考え、そのような価値観を持った未来の単身者が、どのような住まいを選ぶようになるかを予測してみました。

第一弾でも説明しましたが、2030年にはデジタルネイティブ世代と呼ばれる「Z世代」が30代に突入し、購買力を持つようになります(詳細はコチラ)。加速度的に進化するデジタル技術を理解し、うまく利用しながら、先々の人生を見据え、どのような家に住みたいか、どのような生活を送りたいかを考え、自分の暮らしを最適化させるのがこの世代です。

このように、マクロ環境の変化から未来の生活者の価値観や暮らしを具体的に想像することで、事業の中長期の方向性や商品の戦略を描いていくことが可能となります。

今回は住まいについて考えてみましたが、クレオでは、業種・業界に偏らず、暮らしの変化という視点による未来事象の予測データを数多く保有しており、企業様内での未来戦略立案を支援するワークショップの実施や未来戦略を検討するマクロ環境分析レポートの提供をしております。ご興味があれば是非、お問い合わせくださいませ。

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