2023.09.21

生活者研究

未来予測

2030年の社会変化と想定される未来リスク ~2030年の暮らしを捉える Vol.1~

2030年の社会変化と想定される未来リスク ~2030年の暮らしを捉える Vol.1~

これからの未来は、人口減少や少子高齢化による社会構造の変化、デジタル技術の加速度的進展、環境問題などの影響から、これまでの歩みの延長線上にはない新たなフェーズとなることが予測されます。そして企業は、そのような変化に柔軟に対応することが求められます。未来の変化への対応には、過去から現在までの事象を踏まえた傾向予測だけでなく、未来に起こりうる与件から逆算した発想も重要です。
そこで、長年にわたり生活者を研究してきた弊社が、その知見をもとに“2030年の与件”を読み解き、「生活者の暮らしがどのように変わり、そして何が求められるようになるのか」を複数回に分けて考察していきます。第一弾は「2030年の社会変化と想定される未来リスク」についてです。

【1】未来を考える重要性

未来の変化を予測することで、可能となることは大きく2つあります。1つ目は、起こりうる「リスク」の想定です。未来に起こり得ることを予め把握しておければ、影響を最低限に抑えることが可能です。そして、2つ目が「チャンス」の模索です。未来の状況把握により、チャンスを探ることができます。未来の予測は、将来の「リスク」回避、いち早い「チャンス」模索の手段として必要不可欠です。
本レポートでは、2030年のマクロ環境を整理し、未来の変化を分析することで視えてきた2030年の「リスク」について、価値観やライフスタイルといった視点で紹介していきます。

【2】日本の総人口の変化とリスク

日本の総人口

 

総務省の国勢調査などによる人口推計で、日本の総人口の変化を見ていきます。総人口は、 2005年をピークに減少し、2030年には約1億2000万人と予測されています。これは、40年近く昔の1985年と、ほぼ同じ総人口です。それ以降も総人口は減少していき、2035年には1億2000万人を確実に割ると予測されています。また、15-64歳の生産年齢人口の割合も2030年以降、より一層減少していくことが確認できます。


ここで、総人口と生産年齢人口が減少によるリスクを予測します。1つ目は、モノの消費量が減少することによるリスクです。人口増加に伴って成長してきた流通・小売業などでは、総消費量が減ることで、売り上げを上げることが今まで以上に難しくなると考えられます。

2つ目は、労働力減少によるリスクです。生産年齢人口の減少は、必然的に労働力の確保が難しくなることがリスクとして考えられます。企業は、労働力をどのように確保するのか、また少ない労働力で現在の仕事をどのように回していくのかなどを考えることが急務になるでしょう。

【3】エリア人口の変化とリスク

2020年から2030年の人口減少率、減少人数


 
2020年から2030年おいて、各エリアの人口をみていきましょう。日本全国を11エリアに分割し、減少人数と減少率を表しています。先ほど紹介したように、総人口の減少に伴い、各エリアの人口も減っていくことがわかります。特に北海道、東北、甲信越、四国は減少率が8%を超え、過疎化が顕著です。一方で、南関東は 1.3%と他エリアに比べて減少率が低く、首都圏一極集中の傾向が強まることが予想されます。

これらエリアの過疎化・首都圏一極集中から読み解けるリスクは、何があるでしょうか?
1つ目は、地方エリアが今までの機能を果たせなくなることによるリスクです。過疎化により、地方の生産者が減少し、生産物の供給難が推測されます。それにより、仕入れ価格の高騰や仕入れ自体が不可能になるリスクを想定しなければなりません。また、地方商業施設の環境は今まで以上に厳しくなり、地方商業施設とビジネスをしている企業に大きな影響を与えることも考えられます。

2つ目は、企業間競争激化によるリスクです。首都圏一極集中は、ヒト・モノ・カネが集まることに繋がり、首都圏をマーケットとした企業間競争が激化すると想定されます。その際、企業によっては、事業縮小リスクが発生することも予想されそうです。首都圏でビジネスをする企業は、他社に負けない独自の強みが何かを明確にしていくことが、より求められそうです。

【4】世代別人口の変化とリスク

世代別人口の割合

 
未来の世代別人口に目を向けてみると、2030年はZ世代が18~33歳となり、社会や消費に大きな影響を与え始める時期といえます。また5年後の2035年には、Z世代以降の世代が世代人口の3割を超える他、X世代は世代人口の半数を切る予測となっています。つまり、2030年には、社会や消費の中心となるZ世代を見据えた準備を完了させておく必要がありそうです。

Z世代を見据えた際に、生まれるリスクの1つに「仕事」面が考えられます。彼らはデジタルネイティブといわれ、教育としてプログラミングを学んできた世代でもあり、アナログな業務運用は敬遠される可能性がありそうです。そのため、デジタルによる効率化などの投資がされない企業の場合は、離職率が高まるリスクが考えられそうです。また、仕事の価値観において、「仕事の幅を広げる」よりも「一つの専門性を磨くこと」を重視するといれています。そのため、ジョブ型雇用といった整備や、これまでの採用とは違うポイントを打ち出さなくては、採用が立ち行かなくなるリスクも考えられそうです。

【5】世帯構造の変化とリスク

世帯構造の割合

 
次に、2030年における世帯構造の変化です。昨今、単独世帯の増加が話題ですが、どの程度の割合を占めているか把握しているでしょうか。2020年単独世帯は、総世帯の3.5割を占め、「夫婦と子」「ひとり親と子」の世帯とほぼ同じ割合でした。しかし、2030年には「夫婦と子」「ひとり親と子」の割合が減少する一方で、単独世帯が4割に近づく数値まで増加する予測です。

こうした単独世帯が増えることによるリスクは考えられているでしょうか。単独世帯増加によるリスクのひとつは、需要の変化があげられます。親子を対象とした需要から、単身を対象とした需要の変化は、提供側の方向転換が求められることが想定されます。身近なところでは、ファミリーを想定した容量・規格は更に減っていき、敬遠される可能性があります。

住居も、家族で住むのではなく、単身を意識した間取りや、ひとりが過ごしやすく・心地良いと感じる空間を提供することがより重要になってくるかもしれません。こうした単独世帯が求めるニーズを予測・対応していかなければ、市場とかけ離れたサービスの提供となるリスクが考えられそうです。

【6】平均・健康寿命の変化とリスク

平均寿命と健康寿命

 

超高齢化社会に突入している日本ですが、寿命の変化もみていきたいと思います。日本人の平均寿命は延び続け、2030年には男性が82.4歳、女性は88.7歳になることが予測されています。また健康寿命も平均寿命に合わせて延ばすことが目標設定されており、より健康な高齢者が増えていくことが予想されます。


平均寿命・健康寿命の延伸おけるリスクとは何が考えられるでしょうか。
1つ目は、シニア像のズレによるリスクです。高齢者は65歳以上、後期高齢者は75歳以上と定義されており、後期高齢者=心身が衰え、日常生活に何かしらの制限がある高齢者というイメージを持たれている方も少なくないかと思います。しかし、2030年から2040年には、男女ともに後期高齢者でも健康寿命期間となり、“健康な後期高齢者”が多くなると予想されます。そうなると、昔ながらのシニア像を想定した商品・サービス提供では、需要とアンマッチが発生するリスクが考えられそうです。
2つ目は、高齢者の生産性に関するリスクです。高齢者は労働力として期待されてはいるものの、生産性が若い世代と同等とは考えづらいため、雇用数と生産が比例しないリスクが考えられそうです。

【7】終わりに

2030年のマクロ環境データから読み解ける社会変化と未来リスクを考えてみました。今回は、ほんの一部のリスクだけでしたので、もっと異なるリスクを思い描いた方もいらっしゃるのではないでしょうか。未来に起こりうる与件からの逆算で思考すると、視野が拡がり、現状業務の延長ではない事業や商品の戦略を描けることができます。
クレオでは、業種・業界に偏らず、暮らし変化という視点で未来事象を数多く保有しており、企業様内での未来戦略立案をご支援するワークショップの実施や未来戦略を検討するマクロ環境分析レポートのご提供をしております。ご興味があれば是非、お問い合わせくださいませ。

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