2025.10.28
生活者研究
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不確実性の高い社会に適応するために 2026年の生活者の潮流を捉える

混迷をきわめる国際情勢、物価高や円安の常態化、気候変動リスク、そして生成AIによる社会変革の兆しなど、生活者を取り巻く環境はより多面的かつ不安定な様相を強めています。では、不確実性の高い社会状況において、生活者の価値観の変化をどのように捉えていけばよいのでしょうか。
本記事では、2026年がどのような年になるのか、生活者の価値観がどこへ向かっていくのかを、2025年8月26日にクレオが発行した『生活者マインド大全 2026』の主軸コンテンツである「生活TIDE」をもとにご紹介し、2026年における生活者動向を予測していきます。
2026年 生活TIDEの構成
まず、2026年の生活TIDEの構成についてです。(「生活TIDEとは何か」についてはコチラ)
2026年を表す全体潮流が中心にあります。この全体潮流から生活者の暮らしに影響する4つの環境要因を抽出。そしてそこから2026年を表すキーワードが8つ生成され、全体潮流の外郭を構成しています。そして2026年の生活TIDEの全体潮流、環境要因、そしてキーワードは次のようになっています。

中心の全体潮流が「共靭ライフ」、そのまわりに4つの環境要因として、「国際紛争・物価高・税負担」、「人口動態・世帯構造・就業形態」、「日本再評価」そして「AI・テクノロジー」が配置されています。全体潮流を構成する4つの環境要因はPESTに基づき、2026年の生活者価値観を捉えるうえで特に注目すべき要素としてピックアップしています。
そして4つの環境要因を踏まえ、「ニッポンバイブス」「ネオKY」「オウンド経済圏」「Active Day Off」「Q.O.S.F.」「自カク消費」「ともだちAI」「フレキシブル・バウンダリー」という連関する8つのキーワードに落とし込まれています。
ではここからは2026年の全体潮流である「共靭ライフ」について見ていきます。
2026年 生活TIDE ―全体潮流―「共靭ライフ」
2026年生活TIDEの全体潮流である「共靭ライフ」には、仕事や家庭、人間関係、健康といった現在地の制約を穏やかに受け入れた生活者が、ある意味開き直りの境地で他者そして自己に及第点を与え、常に互いがしなやかに変化し連帯しながら前向きに生きていくことで、結果的に人生を主体的に舵取りし、ささやかながらも充足した暮らしをデザインしていくという意味を込めています。
この「共靭ライフ」を、全体潮流を構成する4つの環境要因から紐解いていきます。
1.国際紛争・物価高・税負担
これは、外圧的要素として組み入れている環境要因です。
国際社会においては、米中対立の激化や台湾有事リスクの高まり、ロシア・ウクライナ戦争の膠着、不透明な中東情勢など、地政学上の緊張が常態化しています。アメリカを中心とする保護主義による関税引き上げの動きは世界貿易の障壁となり、資源や食料の安定供給にも大きな影を落としています。日本国内では円安や物価高、実質賃金の伸び悩みが家計を圧迫。気候変動による農作物の供給リスクも深刻化し、日々の暮らしへの不安が高まっています。
2.人口動態・世帯構造・就業形態
これは、この30年で大きく変化した国内の社会構造に起因する要因です。
単身世帯や共働き世帯の増加、超高齢社会の進行により、地域や家族のつながりが空疎化する中、社会保障や医療、子育てや介護といった制度基盤も大きな転換を迫られています。さらに雇用の流動化や住宅市場の二極化といった新たな課題も顕れています。
3.日本再評価
これは、上記の環境要因の中を生きる生活者に昨今芽生えつつある新たな要因です。
国内における暮らしの土台が揺らぐ中、他方、自給的な食料やエネルギーといった国内資源、先端技術や伝統文化、そして国民性などの日本の内発的価値を再評価する機運が高まっており、日本ブランドや和食・地域産品の評価も国内外で上昇しています。また近年は、アニメ・ゲーム・キャラクターなどの知的財産(IP)産業が世界トップレベルの競争力を有し、新たな経済基盤を形成しています。これらの大元には、人口減少や地域の過疎化、産業承継や文化の持続可能性およびナショナルアイデンティティの危機に対する「失われる前に守る」という意識の高まりがあると推測されます。
4.AI・テクノロジー
これは、技術革新・刷新による社会変革とそれらに伴う生活者の暮らしの変化として組み入れている環境要因です。
デジタル技術や生成AI、自動化などのイノベーションは、生活者の暮らしに溶け込んだサービスとして日常的に活用され、また国のサポートのもと、さらなる技術開発が進められています。一方、これらイノベーションは、格差不安や雇用不安、既存の人間関係の希薄化といった課題を浮き彫りにしています。
こうした不確実性の高い社会状況において個人の力によるライフコントロールに限界が来ている中、生活者は冷静に現実を見つめ直し、理想とのギャップを受け入れ、ある意味開き直りの境地で他者そして自己に及第点を与え、緩やかながらも前向きに生きています。

この、緩やかな自己肯定は、混迷する社会状況における、「屈強さ」と「柔軟さ」を併せ持つ、「強靭さ」という現代的な生き方の表れです。自分の軸を持ってしっかりと立ち続けつつ、状況に応じて考え方や行動を柔軟に変化させられる適応力や逆境に耐える強さを持ち合わせた生き方、つまり、一見柔らかそうだけど折れない、一見硬そうだけど柔らかい、といった両義性が矛盾せずに同居する生き方です。分かりやすい例として、法隆寺五重塔とスカイツリーがあります。

これらの共通点は、どちらも「心柱(しんばしら)」という構造を採用していることです。この心柱は、揺れを吸収して建物の倒壊を防ぐ「制震」の役割を果たしています。東京スカイツリーはこの機能を応用し、最新の制振装置を機能させています。1300年以上昔の日本人の叡智が、現代の建築技術に活かされているように、温故知新の「強靭さ」という価値観が、生活者の中にも表れ始めています。
そしてこの「強靭さ」は今日、個々人にとどまらず地域、社会の強靭さへと広がりを見せています。

個人の「強靭さ」と地域、社会の「強靭さ」は連動しており、個人、地域、社会が一本の線で繋がった状態で「強くしなやかである」ことが社会を前進させていきます。そして、互いに認め合い赦し合い支え合うことで共に困難を乗り越えていく「共靭さ」という新たな生活価値観を生み出しています。

仕事や家庭、人間関係、健康といった現在地の制約を穏やかに受け入れ、常に互いがしなやかに変化し連帯していくことで結果的に人生を主体的に舵取りし、ささやかながらも充足した暮らしをデザインする――2026年の生活者は「共靭さ」を以て激動の時代を確かな足取りで歩んでいくと思われます。
「共靭ライフ」とは、生活者が互いにしなやかに変化し連帯しながら前向きに生きていくことで、結果的に人生を主体的に舵取りし、充足した暮らしをデザインしていくという潮流です。
おわりに
以上、2026年における生活者の価値観がどのように変化していくのかを解説しました。上記が2026年を考える一助となれば幸いです。
当記事の基となる『生活者マインド大全 2026』では、ご紹介した全体潮流から派生し“2026年の価値観・潮流”の外郭を構成する8つのキーワードについても提言しています。いずれも新しい時代の要素を掴み、2026年を捉えるために役立つ内容となっています。ぜひこちらもご活用いただき、2026年のマーケットチャンスを掴んでいただければと思います。
執筆者:マーケティング開発部 生活者研究課 河野
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