2023.10.20

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2024年 生活者の価値観の潮流を読み解く

2024年 生活者の価値観の潮流を読み解く

今年の5月に新型コロナウイルス感染症が5類に移行しました。これを受け、生活者は本格的にポストコロナの世界へ向かって歩みを進めています。2020年から現在に至るまでの数年間は、新型コロナウイルス感染症の影響下での社会活動および経済活動をふまえた生活者の価値観が語られてきましたが、2024年における生活者は、もはやコロナ後ではない新たな日常の中にあるため、コロナ禍を経て大きく変化した価値観を踏まえたうえで生活者を捉えていくことが重要になってきます。特に2024年は、緊迫した世界情勢が続く中、物価高・エネルギー高や生成AIの驚異的な進化に伴う諸問題が顕在化しており、生活者の価値観の変化にも大きく影響を及ぼしていると思われますので、その萌芽をしっかり押さえておきたいところです。
本記事では、2024年がどのような年になるのか、生活者の価値観はどこへ向かっていくのかを、2023年8月21日(月)に当社が発行した「生活者マインド大全 2024」の主軸コンテンツである「生活TIDE」をもとにご紹介します。

潮流の捉え方 “生活TIDE”とは

ここからは潮流をどのように捉えるか、つまり「生活TIDE」とは何であるかを説明いたします。まず、「TIDE」についてですが、「TIDE」とは潮の満ち引きを指す英単語であり、海岸や河口付近で月や太陽の引力の影響により海水面が上下する現象を指します。そこから比喩的に、物事の流れや情勢の変化を示す「潮流」という意味としても使われます。
また「TIDE」は漢字の「態度」とも掛け合わされていますが、この漢字の「態度」とは、人間が物事に相対する際の感情や思考が、表情や動作などに現れるさまを言います。

つまり「生活TIDE」とは、時代の潮流や世の中の情勢の変化に起因する生活者の感情、思考、行動に焦点を当て、暮らしにおける価値観の変化を分析することで近未来を予測したものです。

社会情勢の変化と生活者 “生活TIDE”の変遷

株式会社クレオは、この「生活TIDE」という「全体潮流」および「キーワード」の選定を2003年より20年以上にわたって行ってきました。下記スライドはこれまでの「生活TIDE」における全体潮流と、その年の主な社会事象を一覧化したものです。
21世紀に入ってから二十年余り、社会情勢は20世紀とは比較にならない速さで変動し、そしてまた人々の価値観も様々に変化しています。

例えば、2008年にはリーマン・ショックが起こり、世界経済は深刻な不況に陥りました。
日本への影響も大きく、行き過ぎた円高による企業の業績悪化やそれに伴う収入減少から人々の消費意欲は低下。この年の全体潮流は「減力社会の到来」ですが、この頃の生活者は節約や倹約を重視するようになっており、持続可能なライフスタイルへの関心が高まりだしています。
また、2013年には第二次安倍政権が発足し、アベノミクスと呼ばれる経済政策が導入されました。金融緩和により株や不動産などの資産価値が大きく上昇しましたが、資産を持つ者と持たざる者との格差が拡大しました。この年の全体潮流は「くらしアクション」ですが、この頃から生活者は、経済的成功よりも自分らしく等身大であることを求めるようになっていきます。
そして2019年、平成から令和に改元され、新たな時代の到来に人々が希望を抱き始めた矢先、新型コロナウイルスパンデミックが起こりました。世界各国で緊急事態宣言やロックダウンが実施され、経済活動や社会生活に甚大な影響が及びました。
2021年の全体潮流は「Values Shift」ですが、コロナ禍によりリモートワークをはじめとする働き方が促進。時間と空間の捉え方が大きく変わり、生活者の就労観や人生観も変化しました。
このように、“社会情勢の変化”と“生活者の価値観の変容”は相関関係にありますが、生活TIDEとは、その連関を捉えたものです。
2023年5月、新型コロナウイルス感染症が5類へ移行しました。生活者は抑圧された生活からの解放を望み始め、経済や社会の回復に向けて歩み始めています。ここからは、2024年に向かうにあたり、生活者の価値観や潮流がどのように変わりつつあるかを見ていきます。

2024年の価値観・潮流 “生活TIDE”

ここでは2024年の価値観・潮流“生活TIDE”についてご説明します。
まず、2024年の生活TIDEの構成についてです。2024年を表す全体潮流が中心にあり、その全体潮流を構成する3要素を踏まえた2024年を表すキーワードが8つ、派生するように生成され、全体潮流の外郭を構成しています。

全体潮流を構成する3要素である「物価高・エネルギー高・インフレ」と「AI・デジタル」と「ポストコロナ」のいずれかは各キーワードと連関しています。ではここからは、全体潮流について「物価高・エネルギー高・インフレ」と「AI・デジタル」と「ポストコロナ」の3要素を踏まえながら見ていきます。

【2024年全体潮流「新エゴイシス」】

2024年生活TIDEの全体潮流は「新エゴイシス」です。これは、生活者が様々な要因から大きな価値転換を迫られた中で、自己を問い、自己を模索した先に、人としての「より良さ」を求め、新たなフェーズへ向かっていくという意味を込めています。この「新エゴイシス」を、全体潮流を構成する3要素から紐解いていきます。

物価高・エネルギー高・インフレ

2022年2月に端を発したロシア・ウクライナ戦争は長期化の様相を呈しています。また、この戦争を機に米中関係および台湾情勢の緊張が高まっており、戦争放棄国である日本においても茫漠とした戦争不安が漂っています。生活者は、戦争において人命は脆く価値が低いことを知り、当たり前に日々を過ごせていることのかけがえのなさを実感するようになりました。
また、ロシア・ウクライナ戦争の膠着によって続いている物価高やエネルギー高により、日本企業の経済的打撃は累積され、生活者はインフレーションに疲弊しています。一方で生活者は、長きにわたるデフレーションによって「良いものを安く買う」ことを当然の如く享受してきたことに疑問を抱くようになり、価格と価値との関係性を見直し始めています。

AI・デジタル

日進月歩で進化するテクノロジーにおいては、生成AI(ジェネレーティブAI)の精度が大幅に向上。ChatGPTやDALL・E2をはじめとするAI技術の登場により、人間とAIの主従逆転が予測され、生活者は仕事だけではなくアイデンティティまで奪われかねない状況にあります。しかしながら、AI・デジタル技術の躍進によってイノベーションが起こり、人々をより豊かにする新たな仕事や雇用が生まれる可能性も高まっています。
またAIをはじめとするデジタル技術が生活者にとって容易に使いこなせるものとなることで、デジタル上に新たな経済が生まれ、身体的な制限のある人々も健常者と対等に能力を生かす機会を持てるようになり、真の意味でのダイバーシティが実現していくことが予測されます。

ポストコロナ

ご存じの通り、2023年5月以降日本はポストコロナフェーズに入り、世の中は平常化に向かっています。しかしながら、社交的距離の確保、在宅勤務やリモートワーク、ローカル志向といった不可逆性の高い変化も起こっており、コロナ禍以前と以後との世界は一直線ではつながっていません。
また、ビフォーコロナから兆候のあった終身雇用制度の崩壊や若年層の出世敬遠といった勤労観の変化はコロナ禍によって大きく加速。生活者の仕事とプライベートとのプライオリティは逆転し、家族との時間や個人の時間を重視する動きが強まっています。

コロナ禍、戦争、世界的インフレーション、AI技術の発展と脅威などを目の当たりにしたことで大きな価値転換を迫られた生活者は、この困難な時代の中で自己の実存について深く問うようになりました。何に喜怒哀楽を覚えるのか、何を大切にしたいのか、どのように生きたいのか、そして自分とは何者なのか、についてです。

そして、これらの問いは全て、社会、地域、家族、友人、そして自己を「より良くしていく」ことにつながっています。自己を模索した生活者は、2024年、人としての「より良さ」を求め、もはやコロナ後ではない新たなフェーズへ踏み出していくでしょう。
その兆しとして、日々の生活の中にある小さな変化を楽しみ喜びを見出していくことに重きを置く、急激なインフレーションに変動する中で価値と価格との適正さについて考える、自己表現による新たな収入源を得る、自分の意思に忠実に生きることを是とするといった動きが既に見えはじめています。
このように、「新エゴイシス」とは決して利己的なものではなく、生活者個々人が自身の「より良さ」を求めて正直に生きることにより、社会全体が良い方向に向かうという潮流です。

おわりに

以上、コロナ禍を経て新たなフェーズに入る2024年、生活者価値観がどのように変わっていくのかを解説しました。上記が2024年を考える一助となれば幸いです。
当記事の基となる「生活者マインド大全」では、ご紹介した全体潮流から派生し“2024年の価値観・潮流”の外郭を構成する8つのキーワードについても提言しています。いずれも新しい時代の要素を掴み、2024年を捉えるために役立つ内容となっています。ぜひこちらもご活用いただき、2024年のマーケットチャンスを掴んでいただければと思います。

「生活者マインド大全 2024」のご案内 ※2023/8/21より発売開始

株式会社クレオでは毎年10月に翌年の流行や変化を捉えた「生活行動カレンダー」というマーケティングブックを発行してきました。社会動向の変化に伴って生まれる生活トレンドや新しい暮らし行動を、生活者の立場に立った“生活者視点”で描いているのが特徴です。そしてこのたび「生活行動カレンダー」は「生活者マインド大全」としてリブランディングされました。生活者の“行動”の起因となる“マインド”にフォーカスさせ、行動だけでは測ることのできない生活者のインサイトを読み取り、生活者の真のニーズを把握できるようまとめています。2024年のマーケットチャンスを1冊で掴むことのできる唯一無二の書籍です。

→書籍の詳細説明は【コチラ】


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