2023.03.03

業態・企業分析

「Qコマースに見る温故知新のビジネスモデル」~話題の小売業の展開事例から読み解く今後の業態の可能性(Vol.2)~

「Qコマースに見る温故知新のビジネスモデル」~話題の小売業の展開事例から読み解く今後の業態の可能性(Vol.2)~

コロナ禍の長期化やECでの購買の日常化などから消費行動のあり方が大きく変化した今日。しかしながら、人々が生活するうえで必要なものは実のところ大きく変わってはいません。変化しているのは購買方法です。人々は買い物において、より利便性や体験価値を求めています。ゆえに“業態”も模索を経ながら、様々に形を変え、幅を広げています。

株式会社クレオでは、話題の小売業の展開事例をもとに今後の“業態”の可能性を考察する“クレオ業態研究”というシリーズのコラムを数回に分けてお届けいたします。
第2回は、欧米で急成長を遂げ、日本でも参入が相次いでいることから注目される「クイックコマース」についてです。小売業の最新トレンドを収集している方、是非ご覧ください。

注文から最短十数分で商品を届けるサービスである「クイックコマース」が脚光を浴びています。欧米で急成長を遂げ、日本でも参入が相次ぐクイックコマースですが、日本国内で成功事例と呼べるものは現状ではまだ見当たりません。クイックコマースは果たして日本で定着するのでしょうか。本レポートでは、勃興するクイックコマースを「EC」「フードデリバリー」「ネットスーパー」の3つの系統から紐解き、今後を考察します。

1. クイックコマースとは

食品や日用品の注文を請けてから数十分以内に配達するサービスのことです。Quick Commerceの頭文字からQC、Qコマースとも呼ばれます。クイックコマースには、大手ECの短時間配送から発展したサービスと、フードデリバリープラットフォーム事業から日用品配達へ展開したサービスがあり、クイックコマースはまさにECとフードデリバリー双方の利点を組み合わせた業態であると言えます。また、実店舗を持つスーパーマーケットのECサービスであるネットスーパーが即時配達に対応するケースも、クイックコマースに含まれます。

2. クイックコマース ビジネスモデルの原型

クイックコマースのビジネスモデルの原型は昭和期の「三河屋 (酒屋の俗称)」に見ることができます。地域の商店街に実店舗を持つ個人商店で、主に酒、しょうゆ、みりん、酢などの醸造食品を扱っています。御用聞きや電話注文で商取引をし、即日もしくは翌日配達対応をします。商店街の衰退と共にほぼ消滅し、多くはコンビニエンスストアへ業態を変えましたが、「カクヤス」などのディスカウント酒屋チェーンにかつての名残があります。

3. クイックコマースが現在注目される理由

欧米だけでなく日本でも昨今注目されるクイックコマースですが、理由としては以下が挙げられます。

コロナ禍による生活習慣の変化

コロナ禍での行動制限や在宅勤務の普及に伴い、生活必需品の購入にECを利用する人が増え、EC市場全体が活性化。その中でも、即時性やスピードを特徴とするクイックコマースは、日用品や生鮮食品といった消費者にとっての突発的な需要とマッチしたことにより注目が集まりました。

ギグワーカーの参入による利便性の向上

かつては当日集荷・配送の郵便や宅配等は手数料が高額でしたが、コロナ禍を契機にギグワーカーが宅配事業に多数参入したことから、低価格かつ短時間での配送が可能になり、利便性が向上。利用におけるハードルが大きく下がっています。

4. 大手ECによるクイックコマースへの取組み

EC市場を牽引するアマゾンジャパン、楽天グループ、Zホールディングスはいずれも、取扱商品拡大の一環として食のEC化を見込み、積極投資をしていますが、一筋縄ではいかない模様です。以下は、今日に至るまでの大手EC三社の主な取組みです。

5. SMによるクイックコマースへの取組み(ネットスーパー)

スーパーマーケットによるクイックコマース (ネットスーパー) の取組みは、インターネットが普及し始めた1990年代後半から始まっていますが、いまだ普及には至っていません。以下は、今日に至るまでのネットスーパーの主な動きです。

6. CVSによるクイックコマースへの取組み(ネットコンビニ)

第三の勢力として頭角を現しているCVS業界。大手三社のうち、セブンイレブンはネットコンビニ「7NOW」を展開し、配送も専用会社による独自のシステムを構築しています。一方、過去にネットスーパー事業に参入し撤退経験のあるローソンとファミリーマートは、Uber EatsやWolt、menuなど複数の配送事業会社と提携することで販路を広げています。

7. 新興企業によるクイックコマースへの取組み

コロナ禍を機に、新興ネットスーパー、新興デリバリー業、宅配業による新規参入が相次ぎましたが、新興デリバリー業によるクイックコマース事業は多くが約半年で撤退。現在は既存の小売業者との提携の強化に徹しており、クイックコマース業界内で早くも明暗が分かれています。

8. クイックコマースの類型

クイックコマースの業態を類型で分類すると、下図のようになります。

ここから先は以下内容となります。

●クイックコマースの類型
●Yahoo!マート概要
●Yahoo!マートの特徴
●出前館との連携メリット ―ギグワーカー問題―
●Yahoo!マート ウォッチング at 大久保店 & 代々木上原店
●Yahoo!マートに関する所感 ―来店型店舗として―
●クイックコマースの今後 ―Yahoo!マート事例をふまえて―

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出典:(株)クレオ 生活行動研究課「Qコマースに見る温故知新のビジネスモデル」

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