コロナ禍の長期化やECでの購買の日常化などから消費行動のあり方が大きく変化した今日。しかしながら、人々が生活するうえで必要なものは実のところ大きく変わってはいません。変化しているのは購買方法です。人々は買い物において、より利便性や体験価値を求めています。ゆえに“業態”も模索を経ながら、様々に形を変え、幅を広げています。
株式会社クレオでは、話題の小売業の展開事例をもとに今後の“業態”の可能性を考察する“クレオ業態研究”と題するコラムをシリーズでお届けしています。
第4回は、百貨店と比較されることが多く、かつ消費活動が行われる場という意味において消費者から大きな違いがなく見られている「複合商業施設（ショッピングセンター）」についてです。小売業の最新トレンドを収集している方、是非ご覧ください。

ポストコロナフェーズに入り百貨店は回復の兆しを見せるものの、コロナ禍前から業績は低迷しています。一方、複合商業施設はコロナ禍以降も新規オープンが相次いでいます。また、元々百貨店だった場所が市街地再開発により複合商業施設に姿を変えるケースも増えています。百貨店と複合商業施設は、消費活動が行われる場という意味において、消費者から見た際に大きな違いはありません。そこで本レポートでは、市場を拡大し続ける複合商業施設のビジネスモデルを深耕し、今後を考察していきます。

1. 複合商業施設 (ショッピングセンター) とは

「商業施設」とは建築物を⽤途別に分類した概念であり、公共建築協会が定義する施設⽤途分類表によると、各種⼩売店舗、各種飲⾷店舗、遊興・娯楽施設、塾・習い事施設などが該当します。「複合商業施設」とはこれらの各種サービステナントが多数⼊居する⼤規模商業施設であるといえます。
ショッピングセンター (SC) は、⽇本ショッピングセンター協会により「⼀つの単位として計画、開発、所有、管理運営される商業・サービス施設の集合体で、駐⾞場を備えるもの」と定義されています。つまり「ディベロッパーにより計画、開発、所有、管理運営される複合商業施設」であり、複合商業施設とほぼ同義です。
百貨店は「⽇本標準産業分類」や「商業統計」において⼩売業の業態として定義され、要約すると「対⾯販売による⼤規模総合⼩売業態」となります。
SCと百貨店はいずれも消費者視点からみると各種テナントが集積した商業施設ですが、産業分類的にはSCは不動産業、百貨店は⼩売業であり、後述するビジネスモデルに⼤きな違いがあります。

2. ショッピングセンターと百貨店 ビジネスモデルの違い

百貨店の多くは、メーカーから仕入れて自社の店舗で販売する「仕入販売モデル(※1)」を採用しています。個人からの代金がそのまま売上高となりますが、収益の多くを個人への販売に依存しているため、消費動向の変化に弱いです。MDについては、販売しなければ売上にならないため、売場および品揃えを熟考する必要があります。
対し、ショッピングセンターは、テナントとなる小売店を誘致する「賃貸借モデル(※2)」を採用しています。テナントからの賃料収入が主な収益源のため、個人消費の動向にかかわらず安定した収益が期待できます。MDについては、ショッピングセンターはテナント構成を主に考える必要があります。

3. ショッピングセンターと百貨店 市場規模

百貨店とショッピングセンターそれぞれの市場規模推移を見てみると、百貨店は1991年をピークに今日に至るまでの約30年間、右肩下がりが続いており、コロナ前の2019年の段階でピーク時の6割弱にまで市場が縮小。一方、ショッピングセンターはコロナ前までは成長の一途にあり、成長曲線は鈍化しつつも2023年現在、日本各地で新規オープンを控えている状況にあり、業界の更なる拡大が見込まれています。

4. ショッピングセンターと百貨店 コンセプトの違い

百貨店が不況に苦しむ中、ショッピングセンターが成長を続ける理由として、大きくはコンセプトの違いがあります。

ここから先は以下内容となります。
●ショッピングセンターと百貨店 コンセプトの違い（つづき）
●東京ミッドタウン八重洲 概要
●東京ミッドタウン八重洲 コンセプト
●東京ミッドタウン八重洲 施設設計
●東京ミッドタウンを“八重洲”に構える意味
●ストアウォッチング at 東京ミッドタウン八重洲
●東京ミッドタウン八重洲 ストアウォッチング所感
●複合商業施設の今後 ―東京ミッドタウン八重洲をふまえて―

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出典：（株）クレオ 生活行動研究課「複合商業施設（ショッピングセンター）に見る“街づくり”型ビジネス」

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