2023.04.13

業態・企業分析

移動販売 ―実店舗とECを補填する第3のチャネル―~話題の小売業の展開事例から読み解く今後の業態の可能性(Vol.3)~

移動販売 ―実店舗とECを補填する第3のチャネル―~話題の小売業の展開事例から読み解く今後の業態の可能性(Vol.3)~

コロナ禍の長期化やECでの購買の日常化などから消費行動のあり方が大きく変化した今日。しかしながら、人々が生活するうえで必要なものは実のところ大きく変わってはいません。変化しているのは購買方法です。人々は買い物において、より利便性や体験価値を求めています。ゆえに“業態”も模索を経ながら、様々に形を変え、幅を広げています。
株式会社クレオでは、話題の小売業の展開事例をもとに今後の“業態”の可能性を考察する“クレオ業態研究”と題するコラムをシリーズでお届けしています。
第3回は、“実店舗の体験価値”と“ECの利便性”とを併せ持つ新しいチャネルとして近年見直され注目を集める「移動販売」についてです。小売業の最新トレンドを収集している方、是非ご覧ください。


移動販売ビジネスが伸長しています。コロナ禍により人々の行動が大きく制限されたことから、「店が来る」業態である移動販売が持つ、「店に出向くことなく実物を見てから購入できる」という実店舗とECそれぞれへの“補填機能”に注目が集まり、移動販売は市場を拡大させています。そこで本レポートでは、実店舗とECを補填する“第3のチャネル”として躍進する移動販売について、移動販売プラットフォームのビジネスモデルを分析していくことで、今後の可能性を考察します。

1. 移動販売とは 概念整理

まず、消費者向けサービスは提供形式により店頭型サービスと無店舗型サービスに分類できます。そして移動販売をどちらに区分するかは、官庁や業界団体によって⾒解が分かれています。

⼩売業における「移動販売」

流通科学⼤学発⾏の「⼩売・流通⽤語集」では無店舗販売の⼀種として説明しています。⼀⽅で、総務省統計局による「経済センサス」では⼩売業の商品販売形態区分において店頭販売の⼀種として分類しています。

飲⾷業における「移動販売」

飲⾷業はサービス形態別に、店内飲⾷業態 (イートイン)、テイクアウト業態 (持ち帰り)、デリバリー業態 (出前・宅配) に分類できます。総務省「⽇本標準産業分類」では移動販売はテイクアウト業態の⼀種として分類されています。これはいわゆるキッチンカー等の「その場で調理が⾏われるもの」を指します。

その他サービス業における「移動販売」

移動販売は歴史的に⼩売業と飲⾷業におけるサービス形態の⼀つとして展開されてきましたが、近年、靴・バッグ修理、マッサージ、託児所など、生活面や福祉面におけるサービス業の移動販売も展開され始めています。

以上をふまえ移動販売を改めて定義すると、住宅地やオフィス街、駅前、イベント会場などの需要が⾒込まれる地域に出向いてサービスを提供する移動型店舗の総称であると⾔えます。

2. 移動販売の歴史

移動販売の歴史は古く、室町時代の振売にまで遡ります。江戸時代に振売は最盛期を迎え、天秤棒を担ぐ姿が方々で見られました。明治中期以降各地で道幅が広げられ、その頃開発されたリアカーが用いられるようになりました。戦後、高度成長期にはロバのパン屋が人気を博します。昭和50年代以降には自動車による移動販売が一般的になり、そして現在は車両の種類や形態も多様化しています。

3. 移動販売(キッチンカー)の市場規模

下記によると、東京都内で展開するキッチンカーの台数はこの30年で12倍、特に2015年度以降の伸長が著しく、コロナ禍においても市場は拡大しつづけています。昨今はキッチンカー以外の移動販売形態が増えていることから、実際の移動販売市場は更に大きいと推測できます。この推移から鑑みるに、移動販売市場は今後も堅調な成長が期待できると思われます。

4. 移動販売が今注目される理由

市場が拡大し続けている移動販売ですが、昨今改めて注目される理由として以下3点が挙げられます。

コロナ禍による人の流れの変化に対応

巣ごもり需要や働き方の多様化に対応し出店場所を変更できることにより、小売や飲食店の危機を回避

少子高齢化の進展

高齢者を中心に生活必需品の入手が困難ないわゆる「買い物難民」の増加が社会課題化しており、ライフラインとして移動販売の需要が高まっている

実店舗とEC双方のメリットを併せ持つ

商品を買うために店舗へ行く必要がない (ECのメリット)
実物を見てから買う買わないの判断ができる (実店舗のメリット)

このように移動販売が改めて注目されるなか今回取り上げるのは、固定店舗とECをつなぐ「第3の購買の場」を創出する移動販売プラットフォーム“&MIKKE! ”です。 「新しい発見のある第3の買い物体験が、あなたの街へやってくる」をコンセプトに掲げ、シームレスな購買体験のハブを目指すとのこと。
これまでの移動販売と比較し、本取り組みにどのような新規性、優位性があるのかを見ていきます。

5. &MIKKE! 概要

「出店する場所」「車」「顧客基盤」をシェアする移動商業プラットフォーム事業。オフィスや住宅地、商業施設などに出店者による多種多様な移動販売車を配置し、実店舗でもECでもない「第3の購買の場」を創出。

●展開日
2021年11月よりキャラバン営業開始
●展開場所
マンション、駐車場、オフィスビル、商業施設、公園、駅前など
(23年3月時点で、東京都港区、中央区、江東区、品川区、新宿区、台東区、板橋区、荒川区、小金井市にて展開)
●展開プラン
・&MIKKE! STANDARD(車両+出店場所を提供)
・&MIKKE! TRUCK(車両を提供)
・&MIKKE! SPOT(出店場所を提供)
●営業時間
10:00~19:00
●運営会社
三井不動産株式会社
株式会社ShareTomorrow(三井不動産グループの新規事業開発・推進会社)

6. &MIKKE! の特徴

“&MIKKE! ”の最大の特徴は、出店者、消費者、用地提供者それぞれにとってメリットのあるビジネス構造になっていることです。

ここから先は以下内容となります。
●&MIKKE! の特徴(つづき)
●&MIKKE! 参加テナントについて
●&MIKKE! 展開プランの拡充
●&MIKKE! テナントウォッチング at THE TOYOSU TOWER
●移動販売の可能性 ―&MIKKE! 事例をふまえて―

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出典:(株)クレオ 生活行動研究課「実店舗とECを補填する第3の購買チャネル 移動販売」

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出典:(株)クレオ 生活行動研究課「実店舗とECを補填する第3の購買チャネル 移動販売」を加工して作成

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