05
July
2021

マーケティングレポート

日本におけるワクチン接種後の生活者消費動向予測 先行するシニアから始まる回復の道筋は?

日本における新型コロナウイルス関連の環境では、政府が切り札とするワクチン接種における64歳以下への対象拡大、職域接種も本格的に開始され、目標に掲げてきた1日あたり100万回接種を6月の複数の日で達成したと発表されました。7月からのオリンピック開催による感染拡大を懸念する声も見られるものの、“コロナ下”から“コロナ後”に向かい始める過渡期へと移り変わっていくことが現実味を帯びてきています。

伴って、新型コロナ感染拡大以降に度々論じられてきた、本格的な行動・消費回復議論(いわゆるリベンジ消費など)がより過熱していくことでしょう。そこで本記事では、弊社にて実施したアンケート調査をもとに、現在と今後の生活行動・消費意識の変化を可視化し、回復に向かう道筋の予測を立てたいと考えております。

【目次】

■生活者の行動・消費意識が向かう先は?
(1)多くのメディアで取り上げられてきた「リベンジ消費」
(2)現在と今後の暮らしで【重視している/重視したい】こと
(3)現在と今後において【増えている/増えそう】な出費

■年代別の傾向から道筋を探る
(1)変化が顕著な年代は?
(2)シニア層の【重視すること】【増える出費】の特徴は?

■おわりに


■生活者の行動・消費意識が向かう先は?

(1)多くのメディアで取り上げられてきた「リベンジ消費」
新規感染者数に一時的な落ち着きが見られた昨年秋、国内観光地がこぞって賑わいを見せた光景や、今年はじめに自粛反動から「旅行」を中心としたリベンジ消費欲求が拡大する旨の報道がなされたことなど、記憶に新しい方も多いかと思います。また、ワクチン接種率が先行する海外で見られる、飲食・余暇活動を中心とした個人消費の「再起動」も国内メディアに取り上げられ、ワクチン接種後の日本においても消費回復の急先鋒として、“外食・レジャー関連”の盛り上がりが強く期待されるところです。このような予測が立てられる中で、生活者の行動・消費意欲は現在から今後へどのように変わっていくのでしょうか?オリジナルの生活者アンケートをもとに、そのベクトルを探ってみたいと思います。


(2)
現在と今後の暮らしで【重視している/重視したい】こと
当記事に使用している調査結果は第3回緊急事態宣言下の5月に聴取したものとなりますが、生活者の暮らしについて≪現在重視していること※1≫≪新型コロナウイルスが収まってきたら一層重視したいこと※2≫それぞれ複数回答にて伺ったところ、各上位の回答は以下のような結果となりました。


※1・2共通の26項目を複数回答にて聴取、「特にない」を除く各上位3項目を掲出(調査概要はページ下部参照)

健康意識の高まりや、在宅時間の過ごし方は一時の過熱ぶりが薄れてきている印象ですが、≪現在≫においては外に向けての活動が憚られる中で未だ高い意識を持ち続けています。一方、≪今後≫においては先述の通り、長らく自粛基調にある「旅行」や「外食」が今後の盛り上がりを期待させる結果となりました。時期は未定ですが、延長期間が延期している「GoToキャンペーン」が再開される際には、これらの意欲をより一層加速させることでしょう。(尚、4月末には国土交通省が地域観光事業支援の補助の対象期間を12月まで延長する旨を発表しています)

各上位の中で、唯一共通して挙がった項目が「健康管理・運動」です。≪現在≫よりも≪今後≫はポイントを下げているものの、セルフケア意識の高まりは一過性のものではなく、今後もしばらく続いていくことが推測されます。

ここまで上位項目に着目してきましたが、皆さんの関心ごととして、今後どのような行動が“伸長・維持・縮小”していくのかが気になる点ではないでしょうか。各項目ごとに≪現在重視≫と≪今後重視≫の数値を用いて、位置関係を2軸でプロットし区分したところ、項目ごとに特徴が見られたのでご紹介いたします。

尚、位置関係の区分には全ての行動の平均値を使用し、各象限の定義は以下と捉えております。

 第一象限(右上):現在・今後ともに重視意向が高い(=維持・継続)
 第二象限(左上):現在重視意向が高いが、今後は低め(=今後減少懸念)
 第三象限(左下):現在・今後ともに重視意向が低め(=停滞・縮小)※元々の意向が弱いものも含む
 第4象限(右下):現在重視意向は低いが、今後は高め(=今後増加期待)

 

【現在と今後の暮らし重視意識】※全体値(単位:%)
 ≪縦軸:現在重視している/横軸:今後(コロナが収まってきたら)一層重視したい≫※象限分けは全体における「特にない」を除く平均値を使用(X=10.7、Y=10.6)
※各回答%を使用しプロット(20%以上の項目は見やすさを考慮し目盛の尺度を調整して掲出)

上記の散布図から、特徴的な傾向がいくつか見て取れます。
①外食・余暇活動は今後の増加に期待大(国内旅行・外食・海外旅行)
②ウェルネス志向は継続(健康管理、運動・モノを持たない・趣味没頭)
③普段のおうち暮らし充実意識は現在ピーク~今後ピークアウトに向かう見通し(住まい環境・食事充実)

今後起きるだろう、あるいは既に起きているのでは?と予測される行動の変化ですが、生活者の≪現在≫と≪今後≫における重視意識を読み解き、可視化することで、裏付けとなる示唆が得られたのではないでしょうか。


(3)
現在と今後において【増えている/増えそう】な出費
続いて、出費(支出意向)に目を向け、同じ調査にて聴取した≪コロナ前(2019年)と比較して現在増えている出費※3≫≪コロナが収束に向かったら増えそうな出費※4≫より、これからの消費のベクトルを可視化したいと思います。

尚、各上位は以下のような結果となっております。


※3・4共通の23項目を複数回答にて聴取、「特にない」を除く各上位3項目を掲出(調査概要はページ下部参照)

 

【現在と今後の出費増加意識】※全体値(単位:%)
 ≪縦軸:現在増えている出費/横軸:今後(コロナが収束に向かったら)増えそうな出費≫
※象限分けは全体における「特にない」を除く平均値を使用(X=8.2、Y=6.3)
※各回答%を使用しプロット(20%以上の項目は見やすさを考慮し目盛の尺度を調整して掲出)

今後の支出増加が見込める右下の象限では、行動と同様に「旅行」「外食(店内)」が突出し、「衣料・ファッション」や「交際」に関する出費増も見込んでいる様子が伺えます。一方、今後減少が予測される左上の象限では、「外食(店内)」を除く食行動が軒並み位置しており、特に「内食(生鮮食品など)」は≪現在増えている出費≫の中で突出した数値を示しています。今後コロナ収束に向かっていく中で予測される食の変化は、生活者の意識下からも相当の反動を生じさせうることを予感させる結果となりました。

但し、シーンに食事が欠かせない「家族のお祝い事」や「年中行事」に関しては、今後の見通しにおいて平均値前後に位置していることから、反動減が懸念される内食・中食における取組強化ポイントと捉えても良さそうです。

 

代別の傾向から道筋を探る

(1)変化が顕著な年代は?
これまで行動・出費における変化の方向性について述べてきました。但し、これらは年代問わず一律に起きるものではないでしょう。高齢者からワクチン接種が先行していることなどから、今後の行動・消費のスイッチが切り替わる際にも年代差が生じてくることが考えられます。

では、年代ごとに行動・消費意向の違いは実際に表れているのか。また、違いが見られるのであれば、より変化が顕著に表れる年代はどちらなのか。記事タイトルや文脈から既に予想はつきそうですが、可視化してみたいと思います。

【現在と今後の出費増加意識】※年代別の「出費が増える項目がある」割合を掲出(単位:%)
 ≪縦軸:現在の出費意識/横軸:今後の出費意識≫
※「特にない」(排他)の回答率を1から減算した値を活用し年代をプロット
※「60‐70代」は「60代」と「70代」の平均値を使用(年代間の割り付けは均等)

年代別の【出費増加意識】を≪現在≫≪今後≫の2軸で比較したところ、最もポジティブな反応が見られたのは「60‐70代」という結果になりました。やはり、ワクチン接種が下の年代に比べ進行していることが影響しているのでしょう。他の年代を見てみると、60代以上のシニアに次いで≪今後≫の意識が高いのは「50代」、≪現在≫の意識が高いのは「20代」という傾向が見られました。一方、「30代」は≪現在≫≪今後≫ともに最も低い反応を示しています。子育て世代の中心であるため、小さい子供のワクチン接種が見通せないことによる行動控え意識が働いていることや、暮らし向きの悪化などもこの年代に影響しているのではないかと考えられます。


(2)
シニア層の【重視すること】【増える出費】の特徴は?
最後に、変化が最も顕著に表れるだろうシニアの行動・消費意識特徴について触れ、本記事を終えたいと思います。前掲の図にシニアの値を重ねたところ、予想以上の違いが見られました。それぞれ回答率の高い項目を中心に紹介します。

【現在と今後の暮らし重視意識】※全体:シニア比較(単位:%、回答率いずれか20%以上の項目抜粋)
 ≪縦軸:現在重視している/横軸:今後(コロナが収まってきたら)一層重視したい≫
※「シニア値」は「60代」と「70代」の平均値を使用(年代間の割り付けは均等)

暮らしで【重視すること】の違いでは、「健康管理・運動」の値が全体に比べて倍近く伸長しており、最も強く見られたシニアの特徴と言えます。≪現在≫≪今後≫ともに高い意向が見られるため、今後も他の年代に比べて強い傾向をもって維持・継続していくことでしょう。次に、「国内旅行」は≪今後≫の値が伸びており、シニア層の強い潜在需要が伺えます。一方、全体に比べ≪現在≫の値が特に高いのが「家での食事充実」でした。ピークアウトに向かう際のシニア需要の落ち込みは一層の注意が必要になりそうです。

 

【現在と今後の出費増加意識】
 ※全体:シニア比較(単位:%、回答率いずれか20%以上の項目+「家族のお祝い」「年中行事」抜粋)
 ≪縦軸:現在増えている出費/横軸:今後(コロナが収束に向かったら)増えそうな出費≫
※「シニア値」は「60代」と「70代」の平均値を使用(年代間の割り付けは均等)

出費で【増えること】の違いを見ると、「旅行」に次いで≪今後≫の差が大きい「交際」がシニア消費のポイントと考えられます。また、回答率はやや小さいですが、「家族のお祝い」や「年中行事」も出費意向の高さが伺えました。歳時や家族の記念日など、家族が集うハレのシーンは消費回復の糸口に繋がると考えられます。早ければお盆や家族の歳時が続く秋頃から、3世代消費を取り戻そうとする動きも見られ始めるのではないでしょうか。

 

■おわりに

ウィズコロナの局面は、ワクチン接種の普及により一区切りが見え始めてきました。2020年初頭から様々な環境が激変した約1年半でしたが、その中でも大きな変化の一つとして挙げられるのが、時流の変化のスピード感ではないでしょうか。変わり続ける社会環境・生活行動・意識に適応し続けることは、当然ながらコロナ以前より企業にとって必須であったものの、今日における変化のスピードは従来の比ではなく、刻々と変わる情勢に振り回された経験を持つ方も多いことでしょう。同時に、変化を追い続け、先を予測していく必要性を感じた覚えもあるのではないでしょうか。

漸く出口が見えてきたとはいえ、コロナ影響はまだ残り続けるでしょう。今後しばらくはサイクルの早い環境変化への対応・適応は必要であると考えられます。一方、移り変わるニーズやチャンスを追い続ける難しさもあるかと存じます。弊社では当記事に使用した生活者調査を始めとした、ニーズを踏まえた予測からのマーケティング戦略をサポートするコンテンツを各種用意しております。当記事をご覧になるような悩みを抱えた際は、是非とも弊社にご相談頂ければ幸いです。

尚、当記事に使用した図表及び、年代別の行動・消費意識の調査結果をまとめた資料を別途ご用意しております。無料にて配布致しますので、ご興味お持ちの方は下記のフォームより是非お申込み下さい。

最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。

<調査概要>
調査対象:全国男女
有効回答者数:1053人(20代のみ53サンプル、30代~70代各200サンプル)
調査方法:インターネット調査
調査時期:2021年5月

■転載・引用に関する注意事項

1、本ページの記事内容、関連する調査の集計結果、レポート等の著作権は、株式会社クレオが保有します。
転載・引用の際は出典を明記ください 。

【出典の記載例】
出典:(株) クレオ 生活行動研究室「2022年 生活価値観調査」

2、編集、加工などをしてご利用する場合は、上記出典とは別に、編集・加工等を行ったことを記載してください。

【編集・加工等して利用する場合の記載例】
(株) クレオ 生活行動研究室「2022年 生活価値観調査」を加工して作成

3、当記事・当データ・レポートは、正確性、有用性、確実性その他の保証をするものではありません。
当データ・当レポートを利用することにより生じたいかなるトラブル、損失、損害等について、当社は一切の責任を負いません。

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