2024.10.11

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社会の転換期を迎える 2025年の生活者を理解する

社会の転換期を迎える 2025年の生活者を理解する

2025年には団塊世代が全員後期高齢者となり、世界に類を見ない速度で超高齢社会が進展する日本。国際情勢においては戦争不安が続き、円安などによる資源高・物価高も常態化するなど、国際的にも国内的にも厳しい状況におかれています。一方で、成熟社会へ移行した今日の日本において、生活者の価値観も大きく変わりつつあります。では、2025年の生活者の気持ちはどこへ向かうのでしょうか。
本記事では、2025年がどのような年になるのか、生活者の価値観の向かう先はどこかを、2024年8月19日(月)に弊社が発行した「生活者マインド大全 2025」の主軸コンテンツである「生活TIDE」をもとにご紹介し、2025年における生活者動向を予測していきます。

2025年 生活TIDEの構成

まず、2025年の生活TIDEの構成についてです。(「生活TIDEとは何か」については【コチラ】

2025年を表す全体潮流が中心にあります。この全体潮流から生活者の暮らしに直結する3つの構成要素を抽出。そこから2025年を表すキーワードを8つ生成し、全体潮流の外郭を構成しています。そして2025年の生活TIDEの全体潮流、構成要素、そしてキーワードは次のようになっています。

中心の全体潮流が「素因数社会」、その周りに3つの構成要素として「素の自分」、「素の能力」、「素数市場」を配置していることからも分かる通り、「素」が全体のテーマです。素直、素朴、素質、質素、元素など、「す」もしくは「そ」にまつわる単語は様々ありますが、この「素」の漢字自体には、ありのまま、持って生まれた、もと、はじめ、といった意味があります。
この「素」を根底に、全体潮流から生活者の暮らしに直結する要素として「自分」、「能力」、「マーケット(市場)」の3つに分解。そこから、「多層シニア」、「江戸令和オーバーラップ」、「自分リッチ」、「令和茶室」、「ヒト・アビリティ」、「四季熔け」、「ユージュアルグッド」、「真・生活者」の8つのキーワードに落とし込んでいます。

そして3つの構成要素についてですが、1つ目の「素」については、自己を内観し自己の本心に沿って生きるという動きが高まっていることから、「素の自分」としています。「素の自分」から派生したキーワードは、「自分リッチ」、「令和茶室」、「ユージュアルグッド」の3つです。

2つ目の「素」については、人間本来の才能やアビリティへの注目がより高まっていることから、「素の能力」としています。「素の能力」から派生したキーワードは、「江戸令和オーバーラップ」、「ヒト・アビリティ」の2つです。


3つ目の「素」については、最大公約数的なマーケットの捉え方ではなく、各マーケットを丁寧に見ていきマーケットの本質を捉えることがより重視されていることから、「素数市場」としています。「素数市場」から派生したキーワードは、「多層シニア」、「四季熔け」、「真・生活者」の3つです。


では次章からは、2025年潮流の全体テーマである「素」の大本となる「素因数社会」について見ていきます。
 

2025年 生活TIDE ―全体潮流―「素因数社会」

2025年の全体潮流、「素因数社会」とは、社会構造が変化する中、生活者や企業が「素」によって真の豊かさに向かう動きの総体が、社会全体を調和へと導いていくという意味を込めています。
2025年全体潮流が「素因数社会」となった背景として主に3点挙げられます。1つ目は「超高齢社会」、2つ目は「2025年の崖(DXの課題)」、そして3つ目が「国際情勢(戦争・円安・GDP)」です。この3つの背景から「素因数社会」を紐解いていきます。

1.超高齢社会
世界に類を見ない速度で超高齢社会が進む日本。2025年にはいわゆる「団塊の世代」800万人全員が75歳以上つまり後期高齢者となり、年齢別人口比率が劇的に変化します。福祉サービスへの需要が爆発的に増える一方で人材不足が鮮明となり、社会全体への影響は甚大です。

2.2025年の崖(DXの課題)
また2025年は、既存システムの残存による経済損失への警鐘として「2025年の崖」が謳われています。経済産業省の試算によると、2025年に最大12兆円の経済損失が生じる可能性があり、原因とされているのは「IT人材の不足」と「基幹システムの老朽化」です。企業や行政にとって2025年はDXの推進によってこれらを乗り越えられるか否かの分かれ目の年になります。

3.国際情勢(戦争・円安・GDP)
国際情勢においては、ロシア・ウクライナ戦争をはじめイスラエルとハマスの武力衝突や米中冷戦の進展など、戦争不安が常態化。また欧米が戦争景気に沸き、金融政策も相まってインフレが進む中、日米の金利差により円安が加速。日本の通貨が弱まる中、資源高や物価高が常態化し、家計負担は日に日に増しています。2023年のGDPにおいて、日本は世界第3位から第4位へ転落。一人当たりGDPは34位にまで後退し、経済大国としての基準を満たさなくなっています。

国際的にも国内的にも厳しい状況に置かれる日本ですが、2008年をピークに人口減少へ向かい始めた日本は既に成長社会から成熟社会へ移行しており、これらの事象は成熟社会の輪郭が人々の目にも見える形で顕れたことの証左であると言えます。

成長社会では人口が増加し経済が右肩上がりの成長を続ける中、人々にとって足らないもの、欲しいものを満たすことで社会が成り立っていました。大量生産・大量消費が前提であり、所有することで満たされ、消費することが幸せの定義とされていました。集団主義の中で自分自身を相対的に捉え、常に人と比較しながら他者と同じものを求め、社会の中ではみ出さない横並びの人生設計が良しとされてきました。
しかし成熟社会では、経済成長が鈍化し人口が減少していく中、物やサービスや情報が溢れるようになります。誰にとっても不足のない社会においては他者との比較が意味をなさなくなり、理想の生活、人生の夢、目標といった個々人の幸せの概念や価値観が多様化。生活者は背伸びをすることをやめ、他者との比較のために所有していたものを手放し、社会にまみれる中で、虚飾に膨らんだ自己、つまり見栄や虚栄心や自己顕示欲や承認欲求といった、自分を必要以上に大きく見せたいという欲が掛け算され肥大化した自分を、因数分解することで「素」に還ります。
例えば、見栄×虚栄心×自己顕示欲×承認欲求という掛け算で、5桁の数字にまで膨らみ、その虚飾の重しに押しつぶされそうな自分がいるとします。

その人が、肥大化した自己を因数分解していくと、「2の二乗×7の二乗×13の二乗」や「2の三乗×5の二乗×17の二乗」、「3×5の二乗×11の三乗」にまで分解され、自己を「2と7と13」や「2と5と17」、「3と5と11」といった3つの素数で表すことができるようになります。

自分が素数になることで内なる真の自己、つまり自己を構成するプリミティブな部分、自分が大切にしていた部分を取り戻していきます。

そして取り戻した真の自己を解放してあげることで、虚勢を張る必要がなくなります。因数分解され「素」になった生活者は、かつて社会にまみれ人と比較し優劣を競っていた他者基準ではなく、内なる真の自己に則った自分の基準で人生を豊かにしていきます。
そしてまた企業も、個々人の素に連動するように素に還っていきます。

素因数分解された生活者は、内なる自分に則ったそれぞれの基準で物事を見るようになっているため、表層的な狙いによる事業活動はしにくくなっていきます。ゆえに、企業は提供する価値を研ぎ澄ますため、企業の本質的な価値を問い直すべく、素因数分解していきます。素因数分解し、事業の根幹に基づいた経営にシフトすることで、企業は信頼を高めていきます。
素因数分解された生活者たちによって本質的に良いものが求められ、そして、素因数分解された企業によって真に良質な製品がリリースされるようになる。この循環により、社会は真の豊かさへ向かっていきます。
「素因数社会」は、社会構造が変化する中、生活者や企業が「素」によって真の豊かさに向かう動きの総体が、社会全体を調和へと導いていくという潮流です。

 

終わりに

以上、2025年における生活者の価値観がどのように変わっていくのかを解説しました。上記が2025年を考える一助となれば幸いです。
当記事の基となる「生活者マインド大全」では、ご紹介した全体潮流から派生し“2025年の価値観・潮流”の外郭を構成する8つのキーワードについても提言しています。いずれも新しい時代の要素を掴み、2025年を捉えるために役立つ内容となっています。ぜひこちらもご活用いただき、2025年のマーケットチャンスを掴んでいただければと思います。

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「生活者マインド大全」は、生活者の“行動”の起因となる“マインド”にフォーカスさせ、行動だけでは測ることのできない生活者のインサイトを読み取り、生活者の真のニーズを把握できるようまとめられています。2025年のマーケットチャンスを1冊で掴むことのできる唯一無二の書籍です。

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