2023.12.22

生活者研究

歳事・行事

時系列分析で予測する2024年の母の日と父の日

時系列分析で予測する2024年の母の日と父の日

みなさんが歳時提案をする際の主な分析方法としては、前年との比較分析や同曜日まわりの年の傾向分析をすることが多いのではないでしょうか。
しかし、それだけでは十分とは言えません。歳時は実施する生活者の価値観変化に伴い、その意義や役割が変わっています。そして、生活者の価値観は社会の変化に伴って変わります。そのため、より生活者ニーズに合った提案をするためには、マクロ視点で生活者や歳時の変化を捉えることが肝要です。
当記事では生活者の変化とクレオのオリジナル調査の時系列データ分析の結果から、「母の日」や「父の日」の意義や役割の変化を明らかにしつつ、2024年の「母の日」と「父の日」の提案ポイントを考えていきたいと思います。

1、時代の変遷と母・父の役割変化

まずは昭和の時代から現在にいたるまでに、男性と女性の社会的位置づけがどのように変わっているのか、またそれによって家庭内における役割がどのように変化しているのか、いくつかのデータをもとに見ていきたいと思います。


(1)夫と妻に対する価値観の変化

「夫は外で働き、妻は家庭で家を守るべきである」という考え方に対して「賛成」「どちらかといえば賛成」の人の割合の変化を見てみると、1979年から2019年までの間に半減しています。夫は仕事・妻は家庭という価値観が崩れてきていることがわかります。

(2)女性と男性の働き方の変化
①専業主婦世帯数と共働き世帯数の推移
価値観の変化に伴い、働き方も変わってきています。
専業主婦世帯数と共働き世帯数の推移を見てみると、1980年時点では専業主婦世帯が共働き世帯の約1.8倍でしたが、1991年に共働き世帯が専業主婦世帯を逆転。2022年には共働き世帯が専業主婦世帯の約2.3倍となっています。

②男性の育児休暇取得率推移
共働き世帯が増えるとともに、男性が育児をするという動きも広がっています。男性による育児休暇取得率は1996年にはわずか0.12%でしたが、2022年には17.13%となっています。法整備が進められていることなども相まって、特に令和になってから取得率が急増しており、今後も取得率は増えていくことが推測されます。

2、アンケート調査結果から見る母の日と父の日の変化

ここまでは、夫・妻の役割に対する価値観や男女の働き方において性別による垣根がなくなってきていることを見てきました。
では、ここからは生活者による「母の日」「父の日」のお祝いの仕方がどのように変わってきているのか当社の時系列アンケートデータから見ていきます

(1)「母の日」と「父の日」の実施率推移
「母の日」と「父の日」の実施率を比較すると、「母の日」の方が「父の日」に比べ実施率が高くなっています。前章で見てきた通り、「父親は外で仕事をし、母親は家で家事や育児をする」という時代があったことから、親子の関係性において、母親と子供の距離が父親よりも密接だったことが影響していると推察されます。
しかし、時系列でみていくと、「母の日」の実施率は減少傾向となる一方で、「父の日」の減少幅は限定的です。それに伴い、「母の日」と「父の日」の実施率の差も少なくなってきています。家事・育児をする父親が増えてきていることに加え、コロナ禍を経て在宅ワークなど職住融合が進んだことなどが父親と子供との距離を縮める後押しとなり、実施率にも影響していると予測します。

(2)「母の日」と「父の日」のお祝い内容
お祝い内容については「母の日」「父の日」ともに、ギフトの贈答が減少し、家での食事が増加しています。共働きなどで男女ともに日頃忙しい昨今、「母の日」「父の日」が家族とゆっくりコミュニケーションをとるための機会となっているようです。

(3)「母の日」と「父の日」のギフト贈答相手
続いて、「母の日」「父の日」にギフトを贈答した人が誰にギフトを贈ったのかを見てみます。
独身者は、当たり前ではありますが、ほとんどの人が自身の親へギフトを贈っています。
一方、既婚者においては変化が見られました。親、特に義親へのギフト贈答が減少する一方で、妻や夫へのギフト贈答が増加しています。また、自分自身へのギフトも僅かながら増加しています。本来の「母」「父」のお祝いをするのではなく、家庭内における「母」「父」の位置づけにあたる「妻・夫」あるいは「自分自身」を労う傾向が高まっているといえます。

(4)「母の日」と「父の日」の食事のお祝い相手
最後に「母の日」「父の日」に家で食事をした人がお祝いをした相手を見てみると、ギフトの贈答と概ね同様の傾向が見られました。

当社が実施した2023年の「母の日」と「父の日」の食卓写真調査においても、「妻・夫」あるいは「自分自身」を労う食卓が登場しています。例えば、「母の日」に家呑みを楽しむ食卓、「父の日」に妻が企画をして一緒に外食をするなどです。

3、時系列分析から予測する2024年の「母の日」と「父の日」

「夫・妻」「母・父」というジェンダーの意識の垣根が薄れ、家族の中における役割・位置づけが変わってきています。特に既婚世帯においては「母の日」や「父の日」が、従来の「家事をする母・仕事をする父に感謝する」日から「仕事・家事を協働するパートナー(と自分)を労う」日としての色合いを強めています。また、仕事・家事の日々で忙しいからこそ「家族団らんのきっかけ」として重宝されるようになっているようです。

では、2024年の「母の日」や「父の日」はどうなるでしょうか。2023年は新型コロナウイルスが5類に移行した直後だったため、社会の動きはまだ本格化していませんでしたが、1年経った現在、出社や人との交流など社会活動がコロナ前のように活性化してきており、忙しさも増していると考えられます。結果、2024年はより一層「協働パートナーと自分を労いたい」という意向が高まるでしょう

4、おわりに

当記事では、社会変化の変遷と生活者データの時系列変化から、新しい歳時の提案切り口を発見できることを「母の日」と「父の日」を事例にご紹介しました。
クレオでは、母の日・父の日以外にも定量や写真で生活者の実態を把握するための調査を10年以上に渡り実施しております。ご興味がありましたらぜひご相談ください。

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出典:(株)クレオ 生活行動研究課「時系列分析で予測する2024年の母の日と父の日」記事

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