2023.02.02
業態・企業分析
「100均はどこへ向かうのか」~話題の小売業の展開事例から読み解く今後の業態の可能性(Vol.1)~
コロナ禍の長期化やECでの購買の日常化などから消費行動のあり方が大きく変化した今日。しかしながら、人々が生活するうえで必要なものは実のところ大きく変わってはいません。変化しているのは購買方法です。人々は買い物において、より利便性や体験価値を求めています。ゆえに“業態”も模索を経ながら、様々に形を変え、幅を広げています。
株式会社クレオでは、話題の小売業の展開事例をもとに今後の“業態”の可能性を考察する“クレオ業態研究”というシリーズのコラムを数回に分けてお届けいたします。
第1回は、高級感のイメージがある銀座で昨年春から出店が相次いでいる「100円ショップ」および「価格均一ショップ」についてです。小売業の最新トレンドを収集している方、是非ご覧ください。
海外のラグジュアリーブランド店や老舗百貨店などが立ち並び高級感のあるイメージがある銀座で、100円ショップをはじめとする価格均一ショップの出店が相次いでいます。銀座数寄屋橋交差点から半径200メートル内に、100円ショップや300円台が中心の業態が集結。なぜ100円ショップが銀座に進出するのか。100円ショップはどこへ向かおうとしているのか。本レポートではその意図や狙いを、100円ショップと同じSPAの世界的成功事例であるユニクロと無印良品の銀座進出前後の動きを軸に掘り下げ、100円ショップの今後を考察します。
目次
1. 100円ショップとは
店内の商品を原則として1点100円均一で販売する形態の小売店のことです。「100均」「百均」(ひゃっきん)とも呼ばれ、食品から便利グッズに至るまで、幅広い品揃えを展開しています。100円均一というキリのよい価格設定による安さと分かりやすさが大衆から支持され、今日の市場形成に至っています。また100均市場拡大の大きな要因として、様々なジャンルの「エントリー向け商品」の拡充が挙げられます。多くのジャンルはエントリー層が最も厚いため、手軽にトライできるものをとりあえず揃えたいという初心者のニーズを捉え、トレンドジャンルの商品ラインアップを充実させたことが顧客層の拡大につながっています。
2. 100円ショップ業界の動向
大創産業、セリア、キャンドゥ、ワッツ、音通(21年10月にワッツへ事業譲渡し撤退)の大手5社による売上高総計で業界規模を算出すると、2021年度は8900億円超。日本経済新聞社による試算では2024年に1兆円を超える見込みであり、他業態から見ても小売業として無視できない存在になりつつあります。売上高推移を見ると、日本がデフレに陥ってからの二十余年、右肩上がりで成長しており、デフレの中で躍進し続けてきた業態であることが分かります。なお、大手5社の売上高のシェアを見ると、大創産業とセリアの2社で総売上高の8割を超える寡占状態にあります。
3. 100均の特徴 ―SPA(製造小売業)―
100円ショップの最大の特徴はSPA(製造小売業)であることです。SPAとは、製品の企画開発製造から販売までの一連の過程を単一の業者が行うビジネスモデルです。SPA最大のメリットは、サプライチェーンを自社で管理することで、中間流通コストを削減し、商品価格を抑えることができる点にあります。SPAにおける日本企業の世界的な成功事例としては、「ユニクロ」や「GU」を展開するファストファッションの雄であるファーストリテイリングや、インテリア、食料品まで展開する総合型のSPAとして「無印良品」を育てた良品計画が著名です。
4. 「ユニクロ」「無印良品」の世界的成功と銀座進出
上記2ブランドがグローバルブランドに飛躍した契機として挙げられるのが、銀座出店です。この銀座出店には二つの意義があります。一つは「海外への認知度向上」です。ユニクロ、無印良品ともに銀座(と銀座の隣である有楽町)に出店したことで、インバウンド客に対し「日本の一流ブランド」であるという認知を獲得しています。もう一つは「情報発信拠点」としての機能です。「良いものをより安く」という低価格訴求により急成長した両者ですが、低価格訴求の限界を迎えたことから、ブランド力、商品力の強化につとめ、品質、機能性、デザインなどを重視する高付加価値訴求への転換を図りました。銀座にグローバル旗艦店を出すこととは、この高付加価値の背景となるブランドコンセプト、商品開発者の思いなどを世界に発信する機能を持つことであると言えます。
5. 銀座出店の意義1 ―海外への認知度向上―
ユニクロ
1949年に山口県宇部市にて創業。1984年、広島市にユニクロ第1号店を出店、ロードサイド店を中心に地方展開を広げていきます。1998年には東京へ進出し、原宿店をオープンさせます。
2001年、海外に初進出し英国ロンドンに店を構えますが、2年後には21店舗中16店舗を閉鎖。その後しばらく海外展開は停滞します。再び海外展開を加速させる契機となったのは、2012年に銀座で「グローバル旗艦店」を構えて以降です。その後、海外店舗数が加速度的に増加し、現在では海外店舗数が国内店舗数を上回っています。
無印良品
1980年に西友のPB商品として誕生。1983年、東京・青山に直営1号店を出店し、全国に展開していきます。海外展開は1991年に英国ロンドンからスタートしました。欧州と並行して香港などアジアに出店を進めますが、アジア店舗は98年に全て撤退。海外展開躍進の契機となったのは、2001年に情報発信拠点店舗として「無印良品有楽町」をオープンさせたことです。銀座に隣接する有楽町に旗艦店を構え、同年、香港へ再上陸。その後アジアを中心に海外展開を進めていきます。
2015年、「無印良品有楽町」を世界旗艦店として全面リニューアルしてからは、インバウンド客への認知が更に高まり、海外店舗数も著しく増加します。現在はユニクロと同様に、海外店舗数が国内店舗数を上回っています。
6. 銀座出店の意義2 ―情報発信拠点機能―
旗艦店から世界に向けてブランドコンセプトや商品開発者の思いなどを発信するにあたり、商品力の強化を図った事例はおもに以下のものです。
ユニクロ
各種機能性ウエアの開発:ヒートテック、エアリズム、フリース、ウルトラライトダウン etc.
著名デザイナーコラボ:ジル・サンダー、イネス・ドラフレサンジュ 、JWアンダーソン etc.
無印良品
消費者の要望を商品化:ネットインタビューなど
ファウンド・ムジ:世界の定番商品を無印ナイズ
ワールド・ムジ:著名デザイナーによる匿名コラボ
7. ブランドのポジショニング
銀座に進出した価格均一ショップ、ユニクロ、無印良品をポジショニングすると、下記のようになります。
●ブランドのポジショニング
●大創産業 概要
●ダイソーの歩み
●ダイソー考察1 ―海外への認知度向上―
●ダイソー考察2 ―情報発信拠点機能―
●DAISO 銀座グローバル旗艦店ウォッチング所感
●100円ショップの今後
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出典:(株)クレオ 生活行動研究課「100均はどこに向かうのか」
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