25
October
2013

WEBで読める! 最新SP講座

オンライン・ツー・オフライン(O2O)のこれからについて。

昔の呼び方はクリック&モルタル PCマウスを“クリック”そして“モルタル”(mortar)とは建築物。 このコラムをご覧頂いている皆さんのほとんどは、「スマートフォン・ユーザー」でしょうか? この数年で、日本でのスマートフォンの普及は急激に高まり、広告やプロモーション活動においても大きく影響を与えて来ました。 ※2012年度の携帯電話の国内出荷台数は前年比4.5%減の4080万台 そのうちスマートフォンの出荷台数は前年比19.9%増の2898万台 総出荷台数に占めるスマートフォンの出荷台数比率は71% (MM総研の調べ)    また、2012年からO2O(オンライン・ツー・オフライン)と言うワードが広告業界に限らずに、世の中で注目をされて来ました。 現在、流通小売業における様々な業態や事業会社(メーカー)によってO2Oに関する取り組みが見られます。 昨年の暮れに友人と話をする中で、このテーマに触れると「今度は化学か?」(いや、元素記号の話じゃない)とか「B to Bの新しいスタイル?」(それでもない)そんなたわいない会話がありました。 今では、広告代理店やネット関連の会社がO2O専門の会社や組織を立ち上げるなど、これからの日本のマーケティング活動において大きな役割や機能が期待されています。 第7回イラスト   そこで、本題のO2Oについて。 O2Oはネット上(オンライン)から、ネット外の実地(オフライン)での行動へと促す施策のことや、オンラインでの 情報接触行動をもってオフラインでの購買行動に影響を与えるような施策のことを指します。 10年ほど前は、“クリック&モルタル”と呼ばれて、パソコンのマウスをクリックして、現実の店舗での買い物や集客 につなげることを表現していました。 では何故、今この施策が注目を集めるかと言うと、「生活者を取り巻く情報量の過多から広告効果が減少」「店舗を持つ企業における来店客数の減少」、「ネットによる買い物や通販市場の拡大」などの理由が上げられます。 リアル店舗(ネットによる買い物やウェブ上の出店としてアマゾンをはじめとしたオンラインリテーラーの出現から、 あえて“リアル”をつけて表現をするケースも増えて来ました)を持つ企業や、そこで取引をする事業会社などにとっ ては、この対策としてO2Oへの取り組みが重要になってきました。 米国では、こうした動きが日本よりも3年から5年ほど早いスピードで進んでいます。これは、デバイス(携帯端末)などの技術レベルの差が原因と言うよりも、米国の国土の面積やコミュニティ活動や買い物行動が大きく影響をしています。 米国での取り組みからは、新たな可能性やそこに生じる課題を知ることが出来ます。 例えば、ドラッグチェーンのウォルグリーン、スーパーマーケットのホールフーズマーケット、高級百貨店で有名なニーマンマーカスなど、それぞれ独自の工夫が見られます。 このコラムの第1回目でセブン&アイ・ホールディングスの経営トップによる「ネットを制するものは、今後リアルを制す」と言う話に触れました。 このメッセージの発信にいち早く反応したのは、広告代理店やネットやデジタルの業務に関わる企業でした。 「それは従来のネットの世界だけではなく、リアルも含めた革新的なマーケティング活動がはじまる」そんな期待と同時に、まだ見ぬ世界への不安感が覆うスタートでした。      O2Oを取り巻く代理店の活動(戦略)を見ると、大きく3つに分けることが出来ます。 1.総合広告代理店が中心となって広告・販促活動の業務につなげることを目的にした取り組み。 ネット上の情報(オンライン)と、リアル店舗での行動(オフライン)の相互への影響を捉えて、店舗内や既存のマスメディアを含めた包括的な取り組みを行う。 ダウントレンドであるラジオや雑誌と言ったマスメディアの活性化と言う目的からも、ラジオ番組や雑誌と連携してスマートフォンにクーポンを配信し、来店を促すなどの仕組みもこの取り組みの一例です。 2.ウェブサイトを活用したサービス(クーポンをはじめとしたインセンティブの配信)を中心に、リアル店舗と連携したシステムの開発を特徴とする取り組み。 ソフトバンクテレコム(ウルトラ集客)をはじめとしたメガメディアに見られるような、サイト上でクーポンなどの引換券(リアル店舗の売場で引換)や特典提供、メルマガを活用しての継続的なクーポンの配信により 店舗への来店促進を図る展開。 3.ゲーミフィケーション(ゲーム的)などの要素を付加することで、一過性でなく、来店機会を繰り返しつくることを目的にした取り組み。 オフラインとオンラインの循環を意識する仕組みや、コンテンツを活用しPR活動と共に行うことが特徴。 クチコミなどのPR効果を合わせて行うことが最大の特徴になります。   こうした内容は、システム技術の進化や日本におけるO2O環境の変化に伴い、ますます活性化していくものと思われます。 現在、フィーチャー・フォン(従来型携帯電話)を利用しているユーザーはいずれスマートフォンへと切り替え、店舗をはじめネットワーク環境もWi-Fiの活用などにより今よりも改善され、生活者自身が携帯端末を体の一部のように使いこなすなど暮らしのための必需品としてその価値を感じることでしょう。   やがてはじまるコト。システムだけで解決の出来ないコト。 スマートフォンを持ち歩けば、出かけた先々で買い物や食事に関するお得な情報や楽しいニュースが飛び込んで来ます。 まさに“情報が飛び込んで来る“そんな仕組み(プッシュ通信)です。飲食店では、お店の前を通ればクーポンが送られて来て、アパレルショップやブランドショップに入れば試着をしなくても自分の姿・画像に洋服を重ねて見る事が出来たり、ビデオのレンタルショップでは、スマートフォンをパッケージに翳すだけで作品をショート・タイムで視聴できたり。 可能性は無限に広がって行きます。 しかし、こうした中で、良いことばかりではなくて、課題や問題を感じるとしたら、どんなことでしょう。 それは提供される様々なインセンティブ(割引クーポンやサンプル引き換え券)が日常的や慢性化した時に、それを受け取る生活者にとって、「買い物」や「リアル店舗への来店」と言った強い動機付けが作れなくなること。 ちょうどスーパーマーケットのチラシにおいて、どのお店も同じ品を同じセール価格で訴求するかのように…。 商品や店舗が本来持つ価値を考えないで、価格訴求に大きく舵を切ると、企業自体や商品の魅力や存在が希薄化することは米国での小売業における展開からもハッキリしています。 それは、新しい競争相手であるオンラインストアへ消費が移行していくことにつながります。   O2Oのひとつの工夫や表現。 米国のスポーツ専門店の最大手『ディックス・スポーティング・グッズ』。全米に約510店舗あり、昨年は売上・粗利 を大きく伸ばしたことで業界でも注目されています。このスポーツ専門店のウェブサイトに掲載された動画(タイトル :THE CRAFT)に次の様な内容があります。 野球用品の「Wilson」のグラブ職人がグラブやミットをお店で仕上げる様子を丁寧に紹介しています。選手(プレーヤー)がグラブやミットを選んだり使用する際の「インサイト」に、自分の手とグラブのフィット感や、ボールを捕ったり掴みやすいかが重視されます。それを心掛けてグラブを販売する際に、きちんと手入れをしてくれるCRAFT(=職人)がお店にはいます。 ナイキやアディダスと言ったブランドの魅了とは、違うトーン&マナーが感じられます。 また、米国で人気の高いスーパーマーケットのホールフーズは、同様に自社サイトで次の様な動画を掲載させています。 野菜をつくり、牛や鶏を育てるLOCALの農家の人達の作業の様子やお店で販売する花々を栽培する作り手たちの生活の中にあるちょっとしたストーリー(飼育や栽培へのこだわりや工夫)、バレンタインやクリスマスなど歳時の際には店員や店長や、時に生産者や買い物をするお客さん自身も出演し、ホットでコミカルなメッセージに載せて商品やサービスを紹介する姿があります。 ※参考 「THE CRAFT」  http://www.youtube.com/watch?v=PyiYLCsvNio 「O2Oは手段が目的にならない様にする」 ショールーミング化で悩み、来店するお客さんの数が減っているお店にとっては「集客」は最も大切な要素であり、今後もオーバーストアや高齢化、人口減の予測される日本の社会においても取り組むべき重要な課題です。 その中で、お店はSALEの場や景品の引き換え券やイベントへの参加券と言ったインセンティブが受けられる『プラットホーム』にするだけではなく、お客さんに選ばれたりお店に来ることで何かを解決してくれる、そんな期待感や楽しみを持つ存在としてO2Oを上手に機能させることが、これからの小売業(リテール)やメーカー、そしてプロモーションに関わる企業の役割のひとつであると感じます。          ichikawa著者:市川 武也 インサイト、デジタルの活用、お店や商品のブランディングなど課題や機会の多い中で、次世代のマーケティングやプロモーションに取り組む人材の育成と、プランニングのメソッド開発と普及に従事。]]>