21
August
2013

WEBで読める! 最新SP講座

米国で最も高い評価が得られる流通小売企業。良い点を企画の発想に活かしてみる。

〝米国で働いてみたいと思う企業”の10位から20位について。 日本の学生の就職活動が厳しいことは今更言うまでもありません。 私が就活をした1980年-1990年代は今よりもずっと活動がしやすい時代だったと思います。当時はまさにバブル景気のど真ん中。 そのころの資料(大学生の就職データ)を見てみると、「大学生の就職人気ランキング」は、文系1位 日本電信電話(現:NTT まだこの頃は日本電電と呼ばれていました)、2位 東京海上火災 3位 全日本空輸(ANA) 最近は商社・銀行が人気のようですが。 理系の1位は、ソニー 、2位 松下電器産業(現:パナソニック) 、3位 日立製作所。 今見てもうなずける企業がズラリと並んでいます。   また、アメリカでは、毎年雑誌フォーチューンが「働きたい企業500」と言うテーマで特集を組みます。 ここ数年上位にはグーグルをはじめとしたIT関連の企業や、コンサルティング会社、金融・投資会社が並んでいます。そうした中で毎年10位までに1から2社、20位までに2から3社の流通小売業がランキングされ注目を集めます(日本では同様のランキングを行なった際に、小売業の最上位は80位から90位の伊勢丹・高島屋になります)。

働いてみたいと思う小売企業は何が良くて、何が魅力的なのか?

米国で上位にランキングされる流通企業としてWegmans Food Markets(ウェッグマンズ)、Nugget Market(ナゲットマーケット)、Whole Foods Market(ホールフーズマーケット) などがあります。 これら企業はナレッジ・マーチャント・カンパニー(そのまま訳すと「知識商人」になります)と呼ばれます。この中のWhole Foods Market について、数年ウェブなどを使ってベンチマークをしていたことから、今回取り上げたいと思います。同店は米国の西海岸地区・ロスやサンフランシスコ周辺に多く出店し、店舗数は約310店舗 売上げは年間で約90億ドル。 日本の西友の売上げ(ドルにすると約100億ドル)とほぼ同じです。 その西友は全世界No1の売上を誇るWalmart(店舗数は全世界で約10770店舗)グループです。    Whole Foods Market の戦略の特徴を表す3つの言葉。 1つ目はIT戦略。携帯端末の利用・普及率の高い米国では、店舗への集客策として積極的に販売促進にも活用をしています。国土面積が日本に比べて遥かに広い米国では、一度の買い物で複数の店舗を買い回りしたり日本のようにちょっと隣のお店も見てみようと言ったことが出来ません。これは日本と米国の面積の違い、実に23倍もの差が影響をしています。端末のジオフェンシング機能(対象となる店舗の周辺に仮想の壁を設置し、その壁の中に入ったユーザーに対して、自動的に何らかのアクションを示す仕組み)を活用するなどして来店を高める仕組みをつくったり、オムニチャネル(シームレス)による買い物客への全方位型のアプローチが見られます。    
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ホールフーズは日本人の観光客も買い物に立ち寄ることが多く、同店のオーガニック商品やたくさんのデザインを用意したエコバッグなどがお土産として人気です。写真は昨年2012年にハワイのオアフ島にオープンしたカイルア店(ワイキキからはバスで約70分、山を越えて行きます)の正面。
          2つ目はローカル戦略。売場の写真にあるように、生鮮でも加工品でも、オーガニックの売場でもこのローカル(LOCAL)の文字が目に付きます。これは日本版で言うところの「地産地消」です。地元で取れた食材を積極的に扱い、その生産・製造の段階にも同店は多く参画しています。Youtubeを使って生産者の想いや日々の仕事ぶりを捉えたり、収穫作業に地元の人たちが加わったり、オアフ島のカイルア店では島全体での肉や農作物の総生産におけるシェアも開示しています。     
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ホールフーズはオーガニック商品の扱いが多いこととPB商品(WholeFoods365)の売上げが全売上げの約8割程度を占めることでも有名です。このLOCALは同企業のウェブサイトの記事と連動しています。
            3つ目はチーム戦略。Whole Foods では売場ごとに小さなチームを設け、売場で扱う食材の仕入れ(最終的にはバイヤーと調整)や売場作り、買い物客へのサービスを工夫して取り組みます。売場のエントランス、主通路、商品周りではPOPを掲出して彼らのひとりひとりの食材への想いや買い物をされるお客さんへの提案(コメント)が見られます。そしてこれらを推進する中で、買い物客と店員との会話には必ずホスピタリティやフレンドリーシップを感じたり、店内のツールや商品を梱包したダンボールのパッケージに至るまでクリエイティブを感じることが出来ます。パッケージひとつひとつにデザインがされています。                  売場にいること、店員さんに会うことでのワクワク感(感性の品質) 1つ目の携帯端末の活用は、日本の流通小売業おいても最近O2O(Online to Offline)のような集客策として様々な展開が見られます。日本でも携帯端末の普及率もこの1年で大きく伸びて来ましたが、まだまだ業態(特にGMS・SM)の顧客属性や使い方やインセンティブのあり方については検討が必要です。 また、2つ目のローカル戦略と3つ目のチーム戦略については、日本でも同じような課題を捉えて展開する企業もある中、いったい何が違うのでしょうか? それは、買い物客にとって店員との買い物中の会話(ソーシャルメディアを介した情報も含めて)や、売場で工夫をされ置かれた商品や、地元の生産者や地元の他の買い物客と触れ会う中で、“自分だけが見つけられる価値”がそこに点在しているような気がします。「当店ではこういった商品やサービスがありますよ!」と言った呼び掛けで はなくて、自分の気持ちがふつふつとしてくるような感性に働きかけるような「SCENE」や「きっかけ」がそこには感じられます。人はどうしておもてなしされると気持ちが良いのか?ざらつき感や先の見えない売場に何を感じるのか? 「五感や情緒を感じられるお店や広告が良い」こうしたことがよく言われますが、 それを具現化することのヒントになります。 ●買い物客と店員との距離 ●商品と売場とテーマとの距離 ●地元の生産者や近所の買い物客との距離 ○そして、これらの背景にある企業のビジョン 最後に、2枚の写真を並べてみました。 上は今から2年前のWhole Foods Market の青果売場です。「長い時間でも買い物をしていたい」「商品について店員、スタッフに話を聞きたい(たぶん僕の英語では無理だろうけれど)」そして、「こんな売場をつくってみたい。」そうした気持ちがふつふつと沸いてきました。 また、下の写真の売場を歩いた際に「何故こんな売場をつくるの?」と店員に話し掛けたところ「そうだね。こうしてお客さんと話しが出来るからね」そんな声がすぐに返ってきました。
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掲載の写真は全てWhole Foods Market。 エントランスの風景、エンド(LOCALの文字の黒いPOPが見える売場)は オアフ島のカイルア店、上の生鮮品の売場はロス、 左カーブの売場はサンフランシスコ近郊のお店です。     ichikawa著者:市川 武也 インサイト、デジタルの活用、お店や商品のブランディングなど課題や機会の多い中で、次世代のマーケティングやプロモーションに取り組む人材の育成と、プランニングのメソッド開発と普及に従事。]]>