26
September
2013

WEBで読める! 最新SP講座

企画や展開に大切なこと”ゆらぎ”について。

情緒や五感はカタチ(広告やSP)に表現が出来るか? 1990年代の後半にバブル景気がはじけて、これを境に消費や企業の活動が低迷しはじめました。 広告の表現や、プロモーションの仕組みを見ても、バブル時代の前後では随分ちがいを感じます。 90年代、広告に圧倒的な力を感じたのは百貨店やファッション、自動車などの高級商品を扱う業種や業態でした。 やがて、小売業や事業会社(メーカー)も「商品が売れない」「お客さんがお店に来ない、サービスを使ってくれない」という問題を抱えはじめ、これらのことを克服するために夢中になって、時には躍起になって商品の開発を続けてきました。 「高いクオリティで、しかも出来る限りコストを抑えて・・・」 調査を繰り返してスペックを見直し、経費を徹底して下げて、その結果生まれた商品は、いずれ市場において「同じような商品」(現代社会で言う「コモディティ化」の先駆け)として氾濫して来ました。   自分の商品、自分だけの商品(Only One) その中で大手企業が気づいたことは高品質で高信頼性の追求は、似たような商品を生み、企業としての差別化や競争力が高められないと言うこと。そしてやがて注目されたのは、作り手であるプロダクツ側ではなく商品を手にする受け手(=生活者)の感覚や感性でした。 この感性は、情緒的であって非常につかみどころのないものと今までは言われてきました。 情緒を英語にすると、emotion  feeling  sense  などになります。 「情緒が大切。そんな商品をつくろう」「情緒的な売場をつくって、他のお店と差別化しよう」 しかし、これをカタチにしようとすると(数値的なデータに比べてみても)あまりに途方も無い話のように聞こえました。 意識することが「理性」であれば、「感性」はむしろ無意識的なものと言えます。      買いやすい売場であることが魅力的な売場とは限らない 題材を「商品」から「売場」に置き換えてみましょう。通路がまっすぐに伸び商品が整然と並ぶ売場は、買おうとする商品が見つけやすく、一見良い売り場と思いがちです。でも、買い物を終えたヒトに買い物や売場の感想を聞いてみると、何か物足りなさやスッキリしない気持ちを残していることがあります。これはどう言うことでしょうか? 同じような経験をドラマのストーリーと感想に置き換えてみると、明快なストーリーや歯切れが良く耳触りのいい役者の台詞は印象に残らない。つまり、買いやすいことや分かりやすいことが、必ずしもヒトの気持ちの満足につながることではないと言うことです。 整然とした売場ではないがヒトの気持ちを上手く捉えている事例に、「ドンキホーテ」やスーパーマーケットの「オオゼキ」の売場が取り上げられます。   “ゆらぎ”とは、時間や空間の平均値からの変動 熱力学や物理学などの本を読むと(めったに読むヒトはいませんが)この“ゆらぎ”や“ズレ”という言葉をよく目にします。 学者によっては、“ひっかかり”と表現する方もいて、「大発見のヒント」を期待させるものだそうです。 仕事の進め方でデータやロジックを中心に考えてしまうと、やがてアウトプットされるものが、同じような回答やプランになって差別化することが難しいと言った結果になります。 そこで「感性」や「情緒」と言う捉え方が必要な場面では、一度この“ゆらぎ”(まだなんとなく、ふわふわした捉え方ですが)と言う言葉を自分のアタマの中で意識して捉え直してみてはどうでしょうか。 人は意識の中に「言葉」を置くと(自分で意図的にひっかかりを作ろうとすると)普段見えていないものが見えてくることが多くあります。   何かを意識することで発想する感覚(センス)を高める     私はよく広告や売場を見ます。広告であれば、好きなブランドであったり、広告の制作に関わる仲間のつくったコマーシャルであったり。カンヌ映画祭やフィルムフェスティバルは毎年楽しみにしています。 そして、それ以上に「売場」を見るようにしています。 売場については<2通り>の見方をします。 全館・全体を見る俯瞰的な見方、限られたスペースを捉えたミクロ的な見方。 1.全体で見るとき:その企業やお店の戦略や「らしさ」「雰囲気」みたいなものを感じます。 2.ミクロ的に見るとき:ピンポイントの狙いや、次に書くようなことを意識しています。 どちらの見方にも特徴や目的があり、2の見方の方が、この“ゆらぎ”を見つけようとする際の〈ヒント〉になります。 どの売場にもヒントがありますが、ここに4枚の写真を用意しました。 これらの写真からあなたが感じられる“ゆらぎ”や“ひっかかり”は何でしょう?

図1
米国のスーパーの青果売り場です。山積みされた商品の他に、演出に使われているツールや小物、照明に居心地のよさそうな空気みたいなものを感じます。
図2
紙製素材にデザインされたこれらは、メジャーリーグの「アナハイム・エンゼルス」のチケットの購入カード。ホットドッグやドリンクがセットになって販売しています。お店はアナハイムのロードサイトです。
;図4
売り場の主通路に並ばれた飲料。店員さんに尋ねると「離れた場所から見ると、動きがあるように見えるんだ」と自慢げに話してくれた。

 

図3
商品を運んだり売り場に並べる際の段ボールの側面。イラストは雪男。親指を立てているのは「冷やして最適にして運んでいるから、まかせな!」
      素材、光(照明)、色あい、配置(構図)、コピー、書体など、そこに感じる“ゆらぎ”や“ひっかかり”はひとつの要素に限りません。 何かを感じた時に、そこに注目をしてみます。 そして、企画やクリエイティブの発想をする時や課題に向きあった際に、自分の中にしまっておいたこれらの感覚を意識して引き出してみます。この「引き出しのつくり方」については、またお話したいと思います。 「着眼力を持ち引き出しが上手に使えるヒト」は、考える(着火する)際のジャンプ力が圧倒的に違います。 現代では、感性の可視化と言った“ゆらぎ”や“ひっかかり”のようなものを数値化する研究も進んでいます。 「感性工学」や人間の行動を法則的に解明しようとする「行動科学」が注目されるのは、これらの理由からです。 まだまだ、キチンと説明の仕切れない存在ですが、広告やプロモーションにおいて、それがヒトを惹き付ける大きな役割を担っていることは確かです。        ichikawa著者:市川 武也 インサイト、デジタルの活用、お店や商品のブランディングなど課題や機会の多い中で、次世代のマーケティングやプロモーションに取り組む人材の育成と、プランニングのメソッド開発と普及に従事。]]>