24
July
2014

WEBで読める! 最新SP講座

クリエイティブは何を変えたのか?

クリエイティブがこれから果たす役割について。 デジタルの進歩が日々の暮らしや、それを取り巻く環境に様々な変化を与える中、販売促進やコミュニティに携わる私たちの仕事にはどんな『役割』があるのか? 今回は社内のクリエーターとの対話形式で「クリエイティブは何を変えたのか?」をテーマに進めたいと思います。 流通小売業やサービス業、メーカー等の業務を長年担当している当社のアート・ディレクター/長田と話をしてみました。 唐突ではありますが、こんな質問から始めたいと思います。 「クリエーターとは何か?」 長田「はい。クリエイティブを開発する立場で、“クリエーター”と言う肩書きがあります。 この職名は、大きく2つに分類できます。 ひとつは、自分の感性、感情をモノやコトの表現に込めて自己完結させるものや、作品と言ったフィルターを通して世の中にメッセージを送るなどして、一品・作品主義のアーティストと言われるクリエーターです。 もうひとつは、商品やサービスの創造、構築、育成に伴う課題を解決するために活動するソリューション型のクリエーターがあります」 市川「今ソリューション型のクリエーターが注目をされているようですが?」 長田「広告代理店のデザイナーやコピーライターなどは、ソリューション型として認知度の高い職種だと思います。 広告業界では、クリエイティブの最小単位をデザインとコピーと呼んでいます。 この2種類のクリエーターは、方向性も大きく異なる事から、説明するにはやや掘り下げる必要があり、今回は<後者>のソリューション型のクリエーターについて触れたいと思います」 市川「長田君は長い間クリエイティブに携わっています。自身の仕事のスタートについて少し聞かせてください」 長田「はい、私は美術大学を卒業してデザイナーになりましたが、学生時代に“デザイナーとは何か?”をテーマにした授業で、“それは色と形の専門家”と習いました。10年ほど前までは、デザイン=色と形の専門家という言葉の範囲で広く世の中でも識別をされていたと思います」 市川「そうですね。デザインをすると言うと、色を決めたり、形を描く、そうしたイメージが強かったと思います。」 長田「このデザインという言葉のルーツをたどってみると、それはラテン語の“指示する”に由来するとの事でした。 デザインを“指示する”と解釈すると、何事によらずに物事をまとめること、つまり物事に一定の秩序を与える事と理解することができます。 したがって、“デザイン”と言う言葉は、色や形にデザインすることに留まらず、政治や経済や科学や芸術など人間の活動の広い範囲に渡って適用される言葉と言えます。 しかし、日本においては明治初期に“デザイン”と言う言葉が“図案”として訳されたために、現在まで世の中で幅広く使われる意味として、ルーツ(デザインの本来の意の指示をする)に比べて、狭義の意味で使用されています。 デザインという言葉は、使う人や場面によっても解釈や認識が異なっています。 そうした中、最近では佐藤可士和氏(株式会社サムライ)を代表とするソリューション型のクリエーターの活躍領域が広まっている事は説明をするまでもありません。」 市川「クリエーターが商品の開発の中心に居たり、時には病院や学校といった施設を手掛けたりと、色々な活動を見る事があります。 ひと昔前なら、開発は技術者、施設を手掛けるのは設計技師や建築家、そうした枠組みの中で捉えていた気がします」 長田「今の時代の中で求められるのは、まさに“デザインという概念をソリューション手法の図案”といった部分だけではなくて、企業活動を設計して指示するという総合的な役割にデザインを使用していると考えられます(前述の佐藤氏の肩書きは、クリエイティブ・ディレクターです)。 また、コピー(ライティング)における活動領域も、同じ様に変化して来たと感じます。 以前は、商品の魅力であるコア・メッセージを見つけ出して、その商品を企業に変わってコピーという表現で代弁をするという役割が大きかったように思います。 現在、当社でも経営理念(ブランド・ステートメント、志や行動指針や企業の約束についてや、クレド(企業経営における指針や、その伝え方を含めた取り組み)の有り方や表現を含めた相談を頂くことも増えてきました」   では、これからのクリエイティブについて。 長田「過去のクリエイティブ(デザイン・コピー)という言葉は、企業活動を戦略、戦術、手法のフェーズに分けると“手法”と言った最終的な段階で、アウトプットの役割を担うことが殆どでした。 しかし、今後も商品やサービスの作られるスピードは加速して、世の中の情報量は今よりも更に増え続け、(商品やサービスの)コモディティ化は益々進むでしょう。 その中で、企業が競合する他社との違いや、価値を明確にするためには、その企業の柱となる部分である戦略や戦術部分にクリエイティブを導入する事が、今よりもずっと必要になってくると思います。 つまり経営の理念についても、それを差別化して行く為にも、商品やサービスの開発においても“クリエイティブ”と言う概念を取り入れて行くことになるでしょう。 例えば、企業の存在意義を示そうとする理念を具現化したり、差別化する価値を求心力のある言葉として表現し、また、それを基にして消費者や顧客、社員やスタッフへのコミュニケーションや体験させることを設計し、体現化させる、その為の“指示”をします」 市川「そうした考えや行動力を持つクリエーターは、今多く存在しますか?」 長田「まだまだ少数ですが、例え少数でも社会でのクリエイティブの関わり方を変えています。 そして、戦略や戦術や手法を総合的にクリエイト出来るスキルを持ったクリエーターは、グローバル化やイノベーションを求める企業にとって必要不可欠な存在になると信じています。」 情報過多、商品やサービスのコモディティ化が進む中で、<クリエイティブ>にフォーカスして話をしてみました。 クリエイティブは表現における創作過程ではなくて、理念やヴィジョンの検討や決定の段階でも大きく影響を与える 役割を持つ、そうした想いを感じました。 また、今回話をする中、「デザイン・コンサルティング・ファーム」として名高いIDEO(日本にも支社がありますが本社は米国/カリフォルニア州)のトム・ケリーが伝える“イノベーションの創出に必要な役割”について、具体的には下の図にある3つのカテゴリーを設けて、それぞれに複数の役割が存在するとしています。   20回画像     情報収集をする、土台をつくる、実現するそれぞれのキャラクター。私は、クリエイティブやデザインの役割や定義を考える際に、企業の中にいるこうした様々なキャラクター(役割)を持つ人たちの力を掘り下げて、つなげることを視野に入れています。 人の役割と、それを横断的に活かそうとする主旨です。その力が、やがて企業の課題への解決や目標づくりや舵取りと言った大きな役割に携われるようであれば、それは望むところです。 さて、今回まで20回に渡って「Wedで読めるSP最新講座」を掲載して参りました。 次回は、最終回「販売促進をしない販売促進」。約1年間、マーケティングやプロモーションを見つめて来て、これからの時代に何が突破口になるかを考えてみます。   長田敏希 アート・ディレクター/ブランド・マネージャー 東京農業大学 非常勤講師/(財)ブランド・マネージャー認定協会 有資格者 経営理念・戦略立案から、CI、VI、商品開発、空間演出等、ブランディングに関する様々な領域で、右脳発想を 重視したブランド構築ソリューションを提供。現在は、東京農業大学で「流域資源の循環」と「食のブランディング」 をキーワードに学生、社会人、地域住民を対象にした体験・実践型の授業を行っている。 世界三大広告賞のThe One Show(米)をはじめ、PENTAWARDS、iFデザイン賞(独)、毎日広告デザイン賞、APA、 JAGDA、TCCなど国内外の受賞多数。     ichikawa著者:市川 武也 インサイト、デジタルの活用、お店や商品のブランディングなど課題や機会の多い中で、次世代のマーケティングやプロモーションに取り組む人材の育成と、プランニングのメソッド開発と普及に従事。 2010年-2014年国内、海外の主なリテールとメーカーを中心にしたプロモーション(ウェブ、クリエイティブ含め)をまとめ分析。 企業の提供する価値とテーマの創り方を、リアル店舗とデジタルの領域から見つめています。]]>