26
February
2014

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「ワーク・ショップ」と「アイデア・ラッシュ」の違い。

導くことと、醸し出すこと。 企業内の活動における「ワーク・ショップのあり方」が注目されています。 一般に「ワーク・ショップ」と聞くと、学びや創造、問題解決のためのトレーニングの手法として思い浮かべることが多いと思います。 この「ワーク・ショップ」が企業のヴィジョンやコンセプト、戦略であったり、商品開発やマーケティング活動におけるプロモーションやアイデアを求める際など、多岐に渡る目的に活用されることが増えて来ました。 それも社内の担当スタッフに限らずに、外部の協力会社や専門の知見者(そのテーマに添った)などを含めて、数時間数日を掛けて取り組むケースが見られます。 では、この「ワーク・ショップ」は企画のアイデアなどを探る従来の「アイデア・ラッシュ」と何が違うのでしょうか? 重要な少数の中の、さらに重要な少数・要素を見つけること。 ワーク・ショップは、代理店がクライアントと一緒になり、商品やサービス、店舗の課題抽出をしたり、商品開発や プロモーションの方向性を決めたり、時には事業のあり方についても取り組みます。 代理店からはワーク・ショップのファシリテーターや業務の担当者(営業担当やマーケター等)が参加し、クライアントからは商品やサービス、広告、マーケティング、店舗を担当をする人や、時には製造部門の人も参加します。 人数は1回あたり20名以内が良いと思います。 その中に、業務の責任者(執行役等)が含まれることはスピード感を持って進められる事から、ワーク・ショップ全体として望まれるスタイルだと思います。 ワークショップは出来るだけ広い部屋を用意し、模造紙・ホワイトボード・付箋・マーカーなど備品を活用します。 ワークショップの為の専門の部屋やアイデアを誘発する空間・施設を持つ企業もあり、ビジネスとしてのニーズや これからの新しい可能性がうかがえます。 ワーク・ショップは限られた時間の中で、課題やマーケティング活動の進め方についても、その本質や重要な要素を 追求することで価値があります。 ファシリテーターは何が大切か? 「発見のスピードや気づきを促進するための役割」を行う人をファシリテーターと呼び、ワーク・ショップにおける存在は非常に重要です。 調整役や促進者と言った意味がありますが、私は「ファシリテーターはワーク・ショップにおいて、皆が考えやすい空気を醸し出して、目標への筋道を導き出す最適な役割」と捉えています。 優れたファシリテーターは参加者の思考の為の感覚も拡張します。 ワークショップの進め方と参加する人のルール ・まず、ワーク・ショップの参加者は全員リラックスすることから始めます。  →「今日の朝、はじめに出会った人は?」「最近、誰かにありがとうと言われたことは?」   テーマは何でも良いので、まずは会話したり参加するための準備(気持ちのストレッチ)をします。 ・事業内やプロジェクトにおける自分の役割・責任から一旦離れます。  →「後の調整が大変だ!」「自分の部門で出来るかな?」こうした考えは意見の出し方や発想を小さくします。 ・テーマに自分の意見や考えを持ったら、付箋に書いて模造紙に貼ります。  →文字にすることで内容を掘り下げたり、参加者との共通の認識を持ちます。 ・付箋は声を出しながら、読み上げながら模造紙に貼ります。テーマに応じて写真等の素材を用意します。  →メリハリとグラフィック力は大切です。テーマによってはイメージする「写真」「イラスト」を持ち寄りコラージュをします。言葉で伝えきれない部分を表現・補足したり、出来る限り具現化します。 ・他の人の意見やアイデアは決して否定しません。  →アイデアはつながりによって、更に効果的なものが生まれます。他の人の意見について否定や駄目と言う声は必要ありません。 ・商品がテーマであれば、それを買う人、使っている人をイメージします。  →プロダクトアウト(製造や提供する側から)の捉え方ではなく、ショッパーやコンシューマとして考えます。 ・的は最初から絞らずに、集中しながらも広い視点を持って考えます。  →最初から優れた良いアイデアを出そうとするのではなく、まずは高い視野、広い視点から考えます。 ・思考力を高める栄養分は、スナックであったりドリンクであったり。  →アクティビティな取り組みや発想には、アイスブレイク(休憩)によって適度に栄養分を摂りながら行います。 では、ワーク・ショップの様子を見てみます。 クライアントは、「結婚式の式場を手配・運営するブライダル企業」。 課題は「会場の利用を含む結婚式の受注」と「サービス内容の認知促進」。 結婚式を挙げる人の数が年々減少している中(結婚式は時代と世代の影響を大きく受けます)「どんな企画や取り組みが行えるか」についてワーク・ショップによって考え、答えを導きたいと思います。 まず、参加するメンバーとして結婚式を企画・運営する企業のプランナー、営業マン、実際に式場のセッティング等を行うメンバー、そして事業部長ら4名から5名。代理店からは、営業、マーケティング、プランナー、パンフレットやウェブなどのデザイナー、5名から6名が参加します。今回はメンバーをシャッフルして、2つのグループに分けて行うことにします。 結婚について考える人、カップルの気持ちを考えます。 ワーク・ショップに参加される人の中には、既婚者も未婚者もいます。今回は、自分の年齢で構わないので、「自分が結婚を考える人」になりきって行います。ワーク・ショップを進める上では、この「なりきって考える点」はとても大事です。 参加者は20代から40代、年齢や経験も異なれば、そこには色々な意見や価値観がうかがえます。 また、自分の意見や想ったことを伝える際には、必ず付箋を使って声に出し模造紙等に貼り出します。 「結婚をしたい気持ちはあるけれども、結婚式を挙げる為の障壁になるものは何でしょうか?」 ワーク・ショップに参加をしている全員に考えてもらいます。 「親戚や友人を呼ぶ結婚式はお金が掛かる」 「遠方から親戚を呼ぶ結婚式は面倒」 「30代、40代になって、なんとなく式を挙げなくても良いと思っている」 「相手に離婚の経験があり、式は挙げないで身内を集めて食事会にしたい」 「相手との年齢の差があり、親戚や友人を呼ぶ結婚式は照れを感じる」 こうした意見が挙がります。 この中で、最初の課題「結婚式の受注」としてアプローチのし易い声(人やカップル)は、誰でしょう?」 アプローチの可能性はどこにも有りますが、「結婚式を挙げたいけれど」の気持ちを捉えた場合に、その熱や希望が高いのはどの意見でしょうか? 結婚について考える人、カップルの気持ちを考えます。 皆の意見の数を取りまとめる際や優先順位を決める際に、カラーラベル(色の付いたシールです)を使用します。 自分の意見や他人の意見に限らずに「コレッ」と思うコメントにラベルを貼ります。ラベルの数による“見える化”です。 この結果、貼られたラベルの数の多かったものは次の2つでした。 「相手に離婚の経験があり、式は挙げないで身内を集めて食事会にしたい」 「相手との年齢の差があり、親戚や友人を大勢呼ぶ結婚式は照れを感じる」 選んだ際の理由を尋ねると、 「これらのカップルのうち、1人は式を挙げたいと言うインサイトがあるのではないか?」 「離婚や年の差と言った事実があるけれど、式を挙げたくないと言う絶対的な理由ではないのではないか?」 こうした内容を式を挙げると言う行動に転化し、繋げられる仕組みがあれば、今回の課題である「結婚式の受注」に結びつけることが出来ます。 ここで少しの時間“アイスブレイク“を取ります。 人が出合ったり、話し合ったりした際の、緊張をほぐすための手法をこう呼びます。 会議などとは違うことから、長めの休憩時間を取ります。その中で頭を休めたり、ほぐしたりすることは大切な要素になります。 さて、ワーク・ショップもいよいよ後半です。 結婚式の受注を高めるためのアプローチを考える上で、「式を挙げたい気持ちがある人はどんな人か?」 皆が着眼したのは〈離婚の経験〉や〈二人の年齢差〉が障壁になっている点でした。 次に「式を挙げたい」と思う気持ちのスイッチを押す為の仕組みを考えます。 プロモーションについてのアイデアや手法は沢山出て来ました。目的や狙いが絞れているとアイデアの質は高いです。 ・結婚式がはじめてではない方(再婚の場合)に特典を付ける。 ・既に再婚により式を挙げて、二人で新しい人生や楽しみを見つけた人たちからのプレゼンテーションを用意する。 ・二人の年齢の合計数を割引などの特典として活かす。 そして、二人の「年齢の差」を割引の特典にするという案。年の差の数値を割引にすると、年が開いているほど割引率が高まる仕組みになります。 そして、「結婚式を挙げてみたいけれどね」と考える”年の差のあるカップル”にどうやってリーチして行くかが展開の際のポイントになります。 既存のメディア(結婚情報紙や自社のホームページ)やSNS、また式場の利用者やスタッフ等のネットワークも含めて、どうやってクチコミと合わせて情報を拡げるかを考えます。 ここまでのワーク・ショップの時間は開始から約4時間。休憩は2回。 一度のワーク・ショップの時間は、集中する力(知力・体力)等からこの位が丁度良いと思います。 では、一旦ワークショップを終了して、ここで話した内容を紙にまとめることにします。 元の課題とアウトプットした意見や考え方にズレが無いかを確認し今後の進め方や(参加者の)役割を決めます。 ここまで「結婚式の受注の促進」をテーマにしてワーク・ショップの進行やポイントについて記載してきましたが、 結婚式をテーマにした今回のワーク・ショップ、これは『フィクション』として掲載しました。 実際のワーク・ショップで扱うテーマは、企業の課題や本質等(少し大げさなフレーズですが)を掘り下げることから事例として紹介することは難しく、今回は「こうした課題があるならば」と言った視点で記載してみました。 では、「ワーク・ショップ」は従来の「アイデア・ラッシュ」と何が違うのでしょうか? それはファシリテーターの進行によって、ロードマップを描いて「拡散・収束」をスピード感を持ちながら、具現化 に近づける役割(ストーリーづくり)は大きいと思います。アイデア・ラッシュとの目的や効果の違いはここに感じら れます。 ただし、ワーク・ショップは決して万能ではありません。 見えていないものを見つけることや、考え方や打ち合わせの手詰まり感を打破する有効なひとつの〈場〉にすぎません。 そこで、何より大きな成果を得る為には、参加する人たちの「やってのけようとする意思」や「プロジェクトの成功 への想い」、そして「変化を楽しむ感覚」が大切なものだと思います。 15回-115-3     ichikawa著者:市川 武也 インサイト、デジタルの活用、お店や商品のブランディングなど課題や機会の多い中で、次世代のマーケティングやプロモーションに取り組む人材の育成と、プランニングのメソッド開発と普及に従事。 2010年-2014年国内、海外の主なリテールとメーカーを中心にしたプロモーション(ウェブ、クリエイティブ含め)をまとめ分析。 企業の提供する価値とテーマの創り方を、リアル店舗とデジタルの領域から見つめています。]]>