14
February
2014

WEBで読める! 最新SP講座

「オムニチャネル」と「どこでもドア」

オムニチャネルについての日本における取り組み。

「2013年は日本におけるO2O元年」と言う新聞のヘッドラインを昨年1月に目にしました。 O2O(オンラインツーオフライン) このWeb講座でも何度かテーマに取り上げました。 店舗とウェブサイトの相互送客を意味する言葉で、ここ数年ウェブを利用した買い物機会の増加や、リアル店舗における来店数の減少等から、店舗が来店促進を目的に(また、同時にネット利用における買い物の売上アップを含め)取り組む戦術を指します。 日本よりも約25倍の国土面積を持ち、アマゾン・ドット・コムをはじめとしたオンラインリテールが躍進する米国においては、リアル店舗における重点課題であり、同時に施策となっています。 これらに注目が集まる中、ネットやデジタル、ショッパーマーケティングにも大きな影響を与える「オムニチャネル」に関する取り組みが日本でも加速しています。 「マルチチャネル」と「オムニチャネル」について。 流通小売業や企業のマーケティング活動、広告の仕事に関わる人以外でも、既に多くの人が耳にしたり、生活の中で体験している「オムニチャネル」。 「オムニチャネル」のオムニ(omni)とは「皆」や「なにもかも」と言う意味です。 まずはじめに、「マルチチャネル」と「オムニチャネル」の違いについて触れたいと思います。 例えば、ネット通販で洋服や書籍、家電などを注文した場合、その商品はリアル店舗を経由せずに自宅に届けられます。 一方、リアル店舗で購入した商品は、そのまま自分で持ち帰ります。この当たり前の行為には、1つ1つのチャネル(流通経路や販売の手段)が他のチャネルと交わることなく、独立して機能しています。 これをネットや店舗と言った複数の販売経路を持つ「マルチチャネル」と呼びます。 これに対して「オムニチャネル」はネットで商品を注文した場合、その商品をリアル店舗(米国ではコンビニエンス・ストアにアマゾン・ドット・コムが商品を受け取るためのアマゾンロッカーを設置)で受け取ったり、あるいはリアル店舗で見つけた商品を後からスマートフォン等の端末を使って注文をしたり、また、店舗側(メーカーの場合もあります)ではサイトで販売する商品とリアル店舗における商品在庫を分けずに「一元で管理」したり、全てのチャネルを横断しながらマーケティング活動や顧客管理を行うと言った仕組みが行えます。 「オムニチャネル」とは、ネットとリアル店舗を連携することで“どこで買ったか”ということを意識せずに 行える展開と言えます。
14回アマゾン
米国のコンビニエンスストアやドラッグチェーンに 設置されたアマゾン・ドット・コムによるアマゾン・ ロッカー。米国の国土の広さが背景にあります。
    オムニチャネルの日米における代表的な取り組み。 米国では日本よりも4年から5年ほど早く、「オムニチャネル」への取り組みが本格化、日常化しています。 この取り組むスピードの違いの背景や原因には次の様なものがあります。 ・米国での「買い物環境の100年に一度の変化」と言われるネットとリアル店舗との強烈な競争。  Same Day Deliver(自宅配送) vs. Store Pick Up(店舗受取り)  これは「オンラインリテールによる注文後の自宅配送のスピード」対「リアル店舗における在庫管理により店頭での商品受け渡し手段」と言った意味になります。 ・ネット、デジタル技術の進化や普及から生活や買い物行動への影響。  米国ではネットによる買い物が急増し、売上げは約30兆円。日本では約10兆円(共に2013年)。  米国での展開を見ると百貨店では「メイシーズ」、ドラッグストアでは「ウォルグリーン」がオムニチャネルへの積極的な取り組みとして注目を集めています。「ウォルグリーン」では、生活に関するシームレスな場と時間を提供することを目的に、健康に関する全ての事に対応して行こうと、「Happy & Healthy 気がつけばそこにウォルグリーン」をテーマにして携帯端末のアプリケーションの開発を行いました。 これらのアプリケーションで行えることは ・米国では1回の処方箋で5回のオーダーが出来、薬のパッケージを携帯端末のカメラで撮影して画像をウォルグリーンに送るとリアル店舗で、待ち時間や手間が少なく薬を受け取ることが出来ます。 ・自分の健康と薬のデータを携帯端末に入力すると、アラーム機能などで管理や情報提供が受けられます。 ・健康に関する質問への回答やアドバイスを、ウォルグリーンの健康アドバイザーが携帯端末を通じて行います ・ 健康チェックやアドバイスを中心に行うウォルグリーンのバス&専用スタッフがあなたの街を訪れます。  「ウォルグリーン」も「メイシーズ」も買い物をするお客さんを中心にした考え方を持ち、「どこで何を売るか?」ではなく、「誰にどうやって買い物をしてもらうか?」、そして、そこに「自分たち企業としての特徴や“らしさ”というもの」をどう表すかにこだわりを持っています。 では日本ではどうでしょうか?オムニチャネルに取り組むGMS大手2社。 イオンリテールはリアル店舗とインターネットを連携させたショッピングサービスを提供しました。 また、2013年12月にオープンした「幕張新都心」では、「オムニチャネル」の実現に取り組んで来ました。 セブン&アイ・ホールディングスはグループ・シナジーを活用したオムニチャネルの取り組みを加速する事を表明しています。 こうしたオムニチャネルの展開にはリアル店舗(間)における膨大な商品の在庫管理や買い物をするお客さんのIDの統合や、ロジスティックスの整備や見直しなど従来のスタイルを根本から見直す必要があります。 オムニチャネル・リテーリングの成功の鍵について。 今後のリテール(流通小売業)における「オムニチャネル」の取り組みのポイントとして、同テーマに精通されている日本オラクル株式会社(本社:港区北青山)エンタープライズ統括本部(2014年1月)の大島誠氏は講演や著書の中で、以下の点を上げています。 1.来店の仕組み「来店してもらうきっかけづくりが重要」 2.コンバージョンレート※向上の仕組みと「楽しく思わず買ってしまう仕掛け」 来店客を購入者(Shopper)へ 3.購入者から支持者(Advocator)へ そして、オムニチャネル・リテーリングを追求すればするほど、リアル店舗を重視しなければならいこと、つまり流通小売業にとって「原点回帰」が必須であることを話されています。 ※コンバージョンレート:そのサイトで商品を購入したり会員登録を行ったりした人の割合。 「オムニチャネル」は買い物客のプロフィール・データやニーズを把握することや、ネットや流通小売業が様々なシステムを整備することで、ドラえもんの「どこでもドア」の様に目的地を指名する代わりに、商品やサービスを指定すれば、そこで手に入れたり接することが出来ます。社会や生活に大きなメリットを与えそうな「オムニチャネル」も、その一方で旧技術をビジネスの道具や中心に扱われていた人や、そこにあった繋がりを一気に衰退させる可能性もあります。 「オムニチャネルは、買い物を今までよりも便利にさせる」 「オムニチャネルによって従来の買い物の仕方が変わり、買い物に関係するビジネスでマイナスも生じる」 この二極化している状況の中であらためて考えたい事は、「買い物に行きたくなる店舗」「そこで選びたい、買いたいと思う商品」「会いに行きたい店員さん、お店のスタッフ」そして「ネットにおけるインサイト」など、利便性だけではない“人の求める感性や情緒やその為の存在”があります。 その上で、顧客情報の活用やロジスティックスの整備と言ったシステムのあり方が重要になります。 「オムニチャネル」を今後上手に機能させることは、買い物をする人とお店を持つ企業、そしてネットを運営する 企業など全方向に目を配りながらも、“カスタマー・エクスペリエンス”(顧客の経験価値と訳されます。また、このことを向上させる為の検証資料として、カスタマー・ジャーニー-顧客の行動プロセスの流れを旅行マップにたとえたもの-があります)の本当の意味を理解しなければなりません。 以下の図は、「デジタルカメラ」を買おうとする際のオムニチャネルとの関わりを示しています。 まずネットやカタログを使って調べて、次にリアル店舗に行って実物を見て… これは、買い物をする個人によってや、買いものをする商品によって異なると思います。 オムニチャネルは、こうした買い物の検討や実際の購買行動と言った様に、経緯においてシームレス(切れ目がなく)な環境を作り、繋げて行くことが特徴です。 14回     ichikawa著者:市川 武也 インサイト、デジタルの活用、お店や商品のブランディングなど課題や機会の多い中で、次世代のマーケティングやプロモーションに取り組む人材の育成と、プランニングのメソッド開発と普及に従事。 2010年-2014年国内、海外の主なリテールとメーカーを中心にしたプロモーション(ウェブ、クリエイティブ含め)をまとめ分析。 企業の提供する価値とテーマの創り方を、リアル店舗とデジタルの領域から見つめています。]]>