28
April
2014

WEBで読める! 最新SP講座

アイデアの生まれ方

発想(創造すること)のメソッドについて。

いつものように仕事を終えて、会社近くの明治通りを歩いていた時、日中この街でよく目にする世代とは少し違う人たちの姿が目に入りました。
JR/原宿駅や東京メトロ/明治神宮前駅が最寄りのこの街は、平日の19時を過ぎたあたりでも、まだまだ10代から20代の学生や若い世代が多く行き交います。
そんな景色の中には仕事で見慣れているビジネススーツ姿も目に止まります。
スーツ姿の人たちが、道路を挟んだ向かいのビルの屋上を見上げていました。
ビルの屋上に目をやると、スタッフらしい数人が、真っ白な屋外看板に、何やら照明を当てて作業をしている様子でした。
新しい屋外広告の張り替えか(そんな光景はこの街ではよくあることですが)と思ってみていると、看板に向けた照明によって浮かんだ影は、夜間の写真(その隣は翌日の日中です)のようなシルエットを描きました。
“あかりが知恵を育む”シルエットは本を読む女性(少女)の姿を表しています。

図1図2

夜間の写真はパナソニック株式会社 ブランドコミュニケーション本部より提供していただきました。
明治通りに沿った屋外看板に浮かぶ読書する女性のシルエット。
展開については、4月の中旬で終了をしています。

 

 

 

これはパナソニックの屋外広告で、看板の片面には「世界には、夜の読書を夢見る子どもたちがいる。」のコピーと、パナソニックが電気のない地域でくらす人々にソーラーランタンを届けていることが記載されていました。
家電製品や照明機器に携わるパナソニックの“あかりと知恵”をテーマにした秀逸なアイデアを感じる広告でした。

販売促進や様々なマーケティング活動に取り組む中で、私たちはいろいろな“アイデア”が求められます。
このアイデアは、ユニークなプランや、まだ見たことがないと言った目新しさを求めるだけではなく、その企業や商品の持つ課題をどう解決に導くかであったり、何かを変えることで、新しい利益や効果に繋げるかことが出来るかが
<ポイント>と思っています。
よく外資系の企業では、インサイト(気持ちのスイッチを押すボタン)をつかんで、市場や今までの環境を変える様な発想を“BIG IDEA”と呼んで、それを表現する内容を“What to say”と使います。

「我々はBIG IDEAをつくろう!」「伝えるためにWhat to sayを考えよう!」こんな言葉が飛び交います。
では、このBIG IDEAを考えるための方法やコツはあるのでしょうか?                                  
これからのマーケティングやプロモーションを考える人に向けて書いてみたいと思います。                     
決しておもしろいことを行うだけや、話題(最近はバズという言葉が使われます)を作ることが目的ではないことは皆さん理解していることです。
では、「その企画やイベントは何の為に行うのか?」「企業の何を解決するためにアイデアを求めるのか?」

企業が流通小売業でも、事業会社(メーカーをはじめとした)でも、サービス業でも、まずはこの目標や目的について意識したいと思います。
流通小売業のマーケティング目標は、販売額(客単価)のアップと集客のアップ、事業会社であれば販売額やシェアのアップ、取扱いチャネル(ネットも含めた販路の)拡大など、そして流通小売業でも事業会社でも新規顧客の獲得などがあります。

普段アイデアを考えるときに2つのことを繰り返しています。
ひとつは、テーマや課題そのものについて、とことん掘り下げてみること。
商品にしても、お店やサービスにしても課題がある時に、表層的な捉え方ではなく、
「そもそもそれが起こる訳(原因)」
「何が影響していて何が障壁になっているのか?」

テーマであれば、
「その中で何を一番伝える必要があるのか?」
「他と差別化できるのか?」など。

こうした時に「マーケティング・データ(調査について)はどうするか?」と言った質問を受けることがあります。
データは、オープンデータでも調査毎のデータでも出来るだけ見る様にします。そこで気をつけることは、そのデータの背景にあることに注意したいと思います。
顕在化されているものと合わせて、目には見えないインサイトとして潜在的なもののことです。
インサイトは人に限らずに、リテールやブランド、メディアといったものにも存在します。

ひとつ事例を挙げてみます。
「トヨタ自動車 ハイブリッド・ハリアーH.H.」のプロモーションから。
今から17年前の1997年の登場から、今回フルモデルチェンジとして、ブランド広告が展開されました。
ハリアーのコンセプトは、“ワイルド・バット・フォーマル”アウトドアも駆けるし、都会で乗ってもお洒落という二面性(二律背反)を持つこと。
この2つの面を持つクルマの表現に、CMやウェブでは2通りのストーリーを用意して、それをモニター画面で表現する際に(モニター画面を同時に)左右2つに分ける工夫が見られました。

クルマ:ハリアーの登場しない(クルマをひとりの人物として、ハイブリッド・ハリアーの名前からH.H.として表現)画面、これをSideA、そしてその種明かしとなる画面、SideB(Aとまったく同じシチュエーションで、今度は人物に代わってクルマ:ハリアーが登場)が企画され、SNSをはじめ話題を作ると同時に、同車の販売に大きく貢献をしました。
商品の特徴を多面的に捉える手法はありますが、ストーリーやモニター画面(懸賞企画についても、この二面性を追求)を用いた内容は他に例がありません。
そのものが持つ特徴や差別化できる点をとことん掘り下げてみるとこうした企画になります。

もうひとつは、普段から自分の(引き出し)を多く持つこと。
この引き出しに入れておくものは、業種や業態を問わずに、「展開によって何かの効果が期待出来た事例」です。
対象は百貨店もあれば、専門店も、スーパーマーケットも、コンビニエンスストアも。展開された規模(スケール)よりも、「どう言った客層にどんな効果を期待して展開したか?」その効果があったか否かは、読み手である自分自身の判断で良いでしょう。
自分をひとりの生活者・消費者として考えてみます。これを繰り返していると、情報を集めるメリットと合わせて、展開から戦略やテーマを作る過程を読み取る力が身に付きます。
また、プロモーションや時代の潮流なども汲み上げることができます。

では、この引き出しに入れた情報をどの様に企画のアイデアに活かすかについて、事例で紹介します。
アメリカに住む知人から、こんな話を聞きました。
「ニューヨークに面白いハンバーガー屋があります。ここはipadなどのタブレットでハンバーガーを自分のカスタムメードでオーダーができます。
パンや、肉、ソーセージや野菜など個別に注文ができます。そのオーダーメードした自分流バーガーに自分でネーミングして、それがネット上で公開できます。
もし同じものが他のお客さんから注文をされた場合、そのレシピとネーミングを考えた人に1個につき25セントのお金が還元される仕組みです。
個人はFacebookなどのSNSを使用して自分で宣伝して、より多くの友人に買って貰えればいいのです。」

なんだかアメリカらしい発想だと感じると共に、これは日本の流通小売業や事業会社でのマーケティングやプロモーションの取り組みにも活かせるアイデアだと感じました。
ホームセンターやアパレルショップの展開に、時に自動車の販社の企画に置き換えてみると発想が広がります。
引き出しの数は、提案の際のヒントやアイデアを考える時の楽しい気持ちを作ってくれます。
業種や業態を横断してみたり、ディテール(細部)とワイド(幅)を上手に使うと良いと思います。
置き換えたりする発想を「Transfer(トランスファー)」と言います。

発想のメソッドについて、堀り下げることと、引き出しを増やし活用することについて〈2つの事例〉から紹介しました。
「方法論」については、マーケッターやクリエイター、プランナーの数だけいろいろなものがあって良いと思います。
自分のスキルやリアルやデジタルと言った直面する環境の中から、その時に最適な方法を掴めば良いと思います。
そして、それらの方法がマーケティングやプロモーションと言ったビジネスの中で成功をする秘訣と言うものは、
実はたったひとつしかありません。
それは、「愚直なまでに繰り返すことです。」
考えることも、集めることも、それを繰り返す事で、時代の変化に対応できたり、まだ見えない課題や本質に向かう
時の力になると思います。

 

 

ichikawa著者:市川 武也
インサイト、デジタルの活用、お店や商品のブランディングなど課題や機会の多い中で、次世代のマーケティングやプロモーションに取り組む人材の育成と、プランニングのメソッド開発と普及に従事。
2010年-2014年国内、海外の主なリテールとメーカーを中心にしたプロモーション(ウェブ、クリエイティブ含め)をまとめ分析。
企業の提供する価値とテーマの創り方を、リアル店舗とデジタルの領域から見つめています。