31
July
2014

WEBで読める! 最新SP講座

“販売促進をしない販売促進”

これから生活者、そして企業に取り組む上で大切な事。

私たち生活者を取り巻く環境は、ここ数年のインターネットや新しい放送技術などテクノロジーの目覚しい発展によって大きく変化して来ました。その要素のひとつに「メディア」があります。メディアの数はネットの世界では無数に拡がる一方で、広告主企業やそれを扱う代理店の「数」は変わらず、相対的にメディアの価値は下がって、同時に広告主企業の力は高まり、広告やPRと言った活動の価値が問われるようになりました。

「広告をしない広告」「戦略的なPRは終わった」大手の広告代理店や、統合的なマーケティング活動を担う会社では、従来のドメイン(事業領域やコアとする部分)や舵の取り方を見直す提言がありました。
では、リテーラー(小売業)や事業会社(メーカーなど)に向き合う活動、買い物客を軸にした販売促進の活動においてはどうなのでしょうか?
今回あらためて考えてみたいと思います。

販売促進に携わる企業の売上はどう言ったモノで構成されているか?
これは、広告やPR以上に多岐に渡っていて、キャンペーンなどの資材(ポスターなどのツール)や、ノベルティ(景品など)、店頭や売り場で使用されるショーカードやプライスカードと言ったPOP、イベントの演出キット(ディスプレイやユニフォーム、音響・照明に関する機材)、デモンストレーターなどの人的な販売サポート、映像やウェブサイトの制作・運営など、細かな品目が挙げられます。
この中のPOPだけを見ても、その市場は約1953億円(電通による2013年度の日本の広告費に関する資料より)あり、この10年間はほぼ横ばいが続いています。広告市場全体では2013年度5兆9762億円と2年続けて微増(101.4%)でした。

広告やPRの仕事に比べて、「何かモノを作る、人を集める」そうしたイメージが強いことも販売促進の特徴でもあります。
また、企画が展開される<場>がインターネットやマスメディアとは違い、リアルな場所(店舗や施設など)であること、売上や集客と言ったマーケティング目標に直結することを期待されることも、“販売を促進する”と言った名前の通り、その役割や目的がハッキリとしたところがあります。

販売を刺激するモノと販売をつなげていくモノ。
消費者に向けて行われる様々なキャンペーン施策も、店舗で繰り広げられる催しや演出も、買い物をする際の気持ちの(買い物モードから)スイッチを押す最後の一押しにつながったり、催しが企画されることでお店に足を運ぶ事につながる効果が期待できます。
しかし、これらは瞬間的な効果を期待させる『販売刺激』としての役割になります。

今の時代、流通小売業や事業会社に求められているものは、販売を促進して、その効果をつなげて行くための仕組み
づくり(売れ続けたり、お客さんがお店に来てくれる為のもの)です。
かって販売促進は、マーケティング活動における短期的な効果を、広告活動は長期的な効果を期待すると言われていました。
しかし、マスメディアの効果が変わり、生活者(消費者:Customerであり、買い物客:Shopperである)の在り方を考えなければならない時代に、もはや販売促進や広告の役割がどうとか、それぞれの「垣根」を意識すること自体が意味のない時代になって来ました。

流通小売業も事業会社も、現在たくさんの課題を抱えています。売り場や施設などのフィールドにおけるものであったり、提案営業力を問われる商談であったり、社員やスタッフのマネジメントやスキル、商品やサービス自体に於ける事もあります。
従来の広告やPRや販売促進の施策や表現だけに解を求めていないことはハッキリしています。
以前、このWEB SP講座でも取り上げた『ユナイテッドアローズ/ユナイテッド 世界を変える アローズ』も『米国で高い評価を受けているスーパーマーケットのホールフーズ(米国での表記はWhole Foods Market )その店舗のスタッフがチームを作り、サービスの改善、販売の仕方、接客の方法を自らがテーマを決めて行う』などは、これからの〈販売を行う側〉〈消費や買い物をする人〉との向き合い方のヒントが感じられます。
こうした企画が生まれた背景には、モノゴトの本質に目を向け直す<本質直観>と言った思想がありました。
そして、この2つのケースには、企業の内側で働く人たちの意識や沢山のエネルギーが、全体を牽引したことなど共通点があります。

これからの時代、その企業の中に入って行こう。
代理店だからとか、アカウント(お客さんと直に話をするセクション)をする立場ではないからとか、そんな理由は通じないことを頭に置いて、求められる知恵やチカラを準備して、企業に取り組む想いが必要だと思います。
まずは「広告や販売促進らしい取り組み方」と言った考え方には、蓋をしておきます。
その為の手順として、企業のヴィジョンや目標を知ることからはじまり、全体視座で活動を捉えてみることにします。
本質を掴むことに集中して、課題を抽出する(課題については、その企業自体が気づいていないこともあります)その時の見方のコツは「そもそも」を繰り返します。本質に寄る為の大切なキーワードだと思います。

また、自分自身の専門性や得意分野はあって良いと思いますが、本当の課題の解決の為の取り組みを優先します。
メディアの設計や、キャンペーンの運営が得意だからといって、それを先行させることはありません。
経験の少ないジャンルに対して不安を感じながら挑むというよりも、むしろ取り組める機会や活躍の幅が広がると思った方が良い結果につながると思います。
そこにある課題の解決のために全力を注ぐ時に、メディアやプレミアムやツールが発生しないことも考えられます。本質から追いかけて行くことは、従来と違った解決策になることも考えられます。

課題を直観して、あらゆる解決策をつなげて考えようとする人を、クライアント企業は自分たちのアウト・サイドにいる人間や“外の者”とは思いません。コミュニケーションやプロモーション・レベルではなくて事業レベルで捉えようとすれば尚更です。
広告の表現が上手であったり、キャンペーンのアイデアをたくさん提案してくれる代理店は、広告による刺激や販売の刺激を行う上では、大切な役割を持ちます。
しかし、それを更に活かそうとするなら、誰かが全体視座で捉えて、つなげて行く役割が求められます。
全体の権限を任された人が統括して関連する部署に支持を出し牽引していく必要もあります。

販売促進をしない販売促進とは、キャンペーンや売り場づくりを行わないことではありません。
「販売を促進します」と言って、消費の先喰い(販売時期がズレ込むこと)のためだけのキャンペーンや、従来行っていたからと言った慣習的な展開は、課題解決のための施策とは、もう呼べません。
よく考えられた仕組みの上にクリエイティブやコミュニティでつなげて行く(自走させる)、インサイト(ショッパーに限らずに、リテールやソーシャルのインサイトも含めて)をとことん掘り下げて“新しいテーマや経験をつくる”。
消費者や買い物客を本位にしながらも、そこに関わる多くの人や一緒に働く人の在り方(欧米の小売業や事業会社は、この点を今最も重視しています)も考えます。

そうすることで販売促進は、今までと違った役割や効果を生み出す気がします。
“販売促進をしない販売促進”、そうした考え方があっても良いと思います。
しかし、それを進めて行くためには根気のいる考え方や、手間を要する作業が必要だと思います。
物事の本質を求めようとすればするほど、それらを長くやり続けようとする気力や情熱がふつふつと湧いて来る、そんなような気がします。

『WEBで読める! SP最新講座』として、合計21回掲載して参りました。
オンライン・ツー・オフラインやオムニチャネルと言った比較的新しいテーマから、売り場の捉え方やショッパーインサイトと言った店頭や買い物客にフォーカスしたもの、また最近自身が力を注いでいるワークショップや感性工学など、文面(私の力量)では十分に説明をし切れない内容も多々あった事と思います。
また、ここでの考え方や主張はあくまで私自身のものであり、全てが会社の総意(方針)と言ったものではありません。

社内の組織からは内容の確認や校正と言った面で随分カバーをして貰いました。
企業やマーケティングに取り組んでいる多くの人たちと向き合うことから、当講座の掲載については区切りをつけたいと思います。
そこに、また新しい発見や気づきを期待して。長い間お付き合い頂きまして誠に有難うございました。  

 

 

ichikawa著者:市川 武也
インサイト、デジタルの活用、お店や商品のブランディングなど課題や機会の多い中で、次世代のマーケティングやプロモーションに取り組む人材の育成と、プランニングのメソッド開発と普及に従事。
2010年-2014年国内、海外の主なリテールとメーカーを中心にしたプロモーション(ウェブ、クリエイティブ含め)をまとめ分析。
企業の提供する価値とテーマの創り方を、リアル店舗とデジタルの領域から見つめています。