21
August
2017

WEBで読める! 最新SP講座

次世代の販売促進・プロモーションへ

デジタルの普及に伴い新しい手法が登場

小売業やメーカーの販売促進・プロモーションを考えるうえで、まずはその目的を理解することが重要といえます。
小売業にとってこれらを行う目的は「自店への集客と売上アップ」であり、メーカーにとっては「自社製品の取り扱いと売上アップ」にあります。
一見どちらも「売上」という同じゴールを目指しているように見えますが、それぞれのマーケティング目標には大きな違いがあることがわかります。
この差を少しでも近づけるために、販売促進やプロモーションという“補助線”が必要になります。

かつて、マス広告には長期的な効果、販売促進には即効性のある効果が求められていました。
しかし、消費者の価値観や購買行動が変化して、商品がコモディティ化した現代では、これまでの“通説”や“垣根”としてとらえられていた部分も様変わりしています。

販売促進・プロモーションには、懸賞企画やマネキンによる人的な販売支援などさまざまな手法がありますが、近年メーカーでは、自社の製品・ブランドの属するカテゴリーや小売業の課題、商圏などをとらえた展開が見られるようになりました。
ここで示す課題には、実店舗への送客や集客のほか、売上データの分析、EC対策(ネット販売への流動)なども含まれます。
このような傾向が生まれた背景には、景品や特典を使用した懸賞企画では、購買時期の前倒しやキャンペーン実施店の一時的な売上増加にしかつながらないなど、その効果が疑問視されていることもあります。

また、昨今は販売促進・プロモーションにもデジタルの影響が表れて来ました。
デバイスを使用した懸賞企画のほかに、インスタグラムをはじめとしたヴィジュアルの発信やコミュニケーションによって製品・サービスへの関心を喚起したり、来店促進や購買促進につなげるといった手法も多く見られるようになりました。
携帯端末を使用した動画配信による訴求もそのひとつです。動画は30秒や1分と短時間のものが多く、その内容は料理のつくり方や商品・催事・歳時に関連するイベントの紹介など多岐に渡ります。
SNSの普及は、コミュニケーションだけではなく、消費者の購買行動にも大きな影響を与えています。

 

クローズド懸賞を中心にタイアップキャンペーンが増加
2016年度に行われた販売促進・プロモーションの実態を見ると、小売業とメーカーの提携による「タイアップキャンペーン」が全体の8割近くを占め、残りはメーカーが全国一斉に展開する「ナショナルキャンペーン」となっています。近年はナショナルキャンペーンに比べてタイアップキャンペーンが増加傾向にあり、メーカーから小売業へのアプローチ、つまり(メーカー間の)競合対策がますます激化していることがうかがえます。

タイアップキャンペーンの内訳を見ると、クローズド懸賞が約8~9割と前年の企画本数よりも増加。
一方、オープン懸賞は販売促進に対する効果がつかみ難いという理由から、ここ数年は減少傾向にあります。クローズド懸賞の景品として取り扱われるものには、商品券、キャッシュバック、デジタル系クーポンなど実用的なものが多くなっています。
そのほか、シャンプーやシェーバー、栄養食品といったカテゴリーでは、「満足保証」「返金保証」など、製品の満足度や保証をテーマにしたものが多くみられます。
ナショナルキャンペーンで目を引くのは大手ビールメーカーを中心に行われている、ビアサーバーやオリジナルグラスなどの景品が「絶対もらえる」企画です。
これらの手法は、自社製品の消費シーンをとらえて、さらなる需要の拡大が期待できることから、メーカー販促のひとつの“型”として位置付けることができます。

 

米国のドラッグチェーン「ウォルグリーン」の成功事例
海外における販売促進・プロモーション活動の成功事例として日本のさまざまな企業から注目されている全米最大手のドラッグチェーン「ウォルグリーン」の取り組みを紹介します。

創業から100年以上の歴史をもつウォルグリーンは、従来の「ヘルス&ビューティスタイル」から「健康美容商品と生活用品のデスティネーションストア」へコンセプトを転換し、地域のヘルス&ウェルネスセンターとコンビニエンスストアとしての機能を取り入れています。

同チェーンでは、自社アプリを販売促進に活用しており、その中に「Refill by Scan(スキャンして補充)」という機能があります。
これは、処方箋の補充が必要になった際に、ユーザーは薬に付いているバーコードをスマホのカメラ機能を使ってスキャンするだけで、数時間後には自ら選んだウォルグリーンの店舗で(スキャンした薬を)受け取ることができる機能です。
米国では1度の処方箋で複数回薬を補充することができるため、ユーザーにとっては非常に利便性が高いサービスといえます。
さらに、同アプリには、薬の購入をはじめ、店舗での予防接種や血圧測定を受けた回数、ウォーキングの走行距離などに応じてポイントを獲得することができる仕組みがあります。集めたポイントは、ウォルグリーンでの買い物の際に割引ポイントとして利用することが可能です。

また、ここ数年話題を集めているプロモーションに「Red Nose Day(レッド・ノーズ・デイ/赤い鼻の日)」があります。
日本の赤い羽根共同募金に似た企画で、ウォルグリーンが協賛企業を募り(2017年はコカ・コーラ、M&Ms、リプトン、オレオなどが協賛)、店頭やウェブサイト、メディアなどで大々的に展開しています。
世界中の病気の子どもたちのサポートを目的にしたチャリティ企画として、同チェーンではRed Nose Day(2017年は5月25日)までの期間中の売上・収益の一部を寄付しています。

売場では、協賛企業の商品をPOPでアピールしたり、専用コーナーを設けたりすると共に、Red NoseDayのロゴ・マークの付いたリストバンドやサインペン、バッジをそれぞれ1ドルで販売。ユニークなのは樹脂素材でできた“赤い鼻”のオリジナルグッズを販売している点で、この赤い鼻は人を楽しませてくれるピエロにちなんでいて、大勢の人々が赤い鼻を付けた画像をSNSに投稿し「笑いは最良の薬」というメッセージのもと拡散していることです。
ウォルグリーンのようなアプリの開発やチャリティ企画は大掛かりなものですが、買い物客の視点で“その店舗を利用する理由”や“その店舗を選ぶ理由”をとらえると、これからの時代の販売促進やプロモーションを考えるうえでのヒントが見えてきます。

図1

Red Nose Day (レッド・ノーズ・デー)は、もともとイギリスではじまり、現在は米国でも話題性の高いチャリティ企画として行われています。
写真はウォルグリーンの店内やレジ周辺に置かれたチャリティグッズ(赤い鼻)やフライヤー、POP

 

これからの時代を見据えた販売促進・プロモーション

メーカーから小売業に対する、自社製品の売場を獲得するための提案活動は続きます。しかし、自店の売場課題の解決を求める小売業にとって、メーカーによる従来の販促手法は十分な効果が期待できるものとはいえません。
新規顧客の獲得が難しい時代、小売業において優先されるマーケティング目標は、「客単価のアップ」があげられます。
そのため、メーカーによる自社製品の訴求やブランド・テーマでくくられた懸賞企画やイベントは、(小売業にとってみると)数ある施策のひとつにしか映りません。

そうしたなか、最近注目されているテーマのひとつに「話題力のある店舗」があります。
お店や売場が積極的に情報を発信することで買い物客の行動を変え、売上につなげようとする取り組みです。
メーカーは懸賞企画や特典を提案する前に、お店で買い物をするお客の行動に注視して、それを変える「テーマ」や「コト」を小売業と一緒に考えて新しい商機をつくりだしていくことが期待されます。
この「テーマ」や「コト」は、生活歳時や地元に着目した事柄であったり、生活者や買い物客のインサイトであったりしますが、買い物客の行動を変える「誘発装置」のあり方を今以上に工夫する必要があるといえます。

そのうえで、ソフトウェやツールを含むデジタルを活用することで、販売促進やプロモーションの新しい効果を見つけることが求められています。
たとえば、AI(人工知能)や画像認識・分析などのテクノロジーは、今後“あなただけのプロモーション”というような、よりパーソナルな展開を可能にしていきます。その実現のためにも、小売業とメーカーの共働は今後ますます重要になるでしょう。

我々代理店はその中で役割を果たしていきたいと思います。

 

 

ichikawa著者:市川 武也
インサイト、デジタルの活用、お店や商品のブランディングなど課題や機会の多い中で、次世代のマーケティングやプロモーションに取り組む人材の育成と、プランニングのメソッド開発と普及に従事。
2010年-2016年国内、海外の主なリテールとメーカーを中心にしたプロモーション(ウェブ、クリエイティブ含め)をまとめ分析。
企業の提供する価値とテーマの創り方を、リアル店舗とデジタルの領域から見つめています。